ブックタイトル森林のたより 783号 2018年12月

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概要

森林のたより 783号 2018年12月

活かす知恵とを森林人72●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー教授●横井秀一複雑に見える森づくりをシンプルに考える●作業の質を高める+αの知見もちろん、この四つの原則だけでは質の高い作業は行えません。作業の質を高めるには、より多くの科学的知見が必要です。裏を返せば、多くの科学的知見を持っていると、作業の質を高められるということです。その知見とは、種子の散布様式、発芽様式、初期成長速度、耐陰性、シュートの伸長様式、樹形、好適立地などです。これらは、種ごとに異なる特性ですが、似た仲間のグループで捉えることもできます。これらの科学的知見は、実際の樹木や森林を観察することで気づくことができます。一方で、本を読んだり人に教わったりして、知識として身に付けることもできます。両者のバランスをとりながら自分のものにすることが大事だと思います。科学的知見に基づく技術は、多様な現場に対応しようとするとき、強い味方になるはずです。それでも、現場で困ることはあるでしょう。そのときは、何がいけなかったかをシンプルに考えることで、理由がわかり、解決策を見つけることができるかもしれません。シンプル・イズ・ベストです。業も、「必要なものを導入する」か、「不要なものを除去する」かのどちらかです。これらのことを突き詰めていけば、複雑そうに見える多様な施業も、本質はとてもシンプルなものだということに気が付きます。●押さえておくべき四つの原則シンプルに考える第一歩は、対象が樹木という生き物であり、森林は生き物の集団であるということを認識することです。そこで起きている様々な現象は、科学(生物学や生態学など)によって説明できます。そして、最も大事なことは、もっとも基本的なところにあるものです。「必要なものを導入する」というのは、更新の場面です。そこで押さえるべき科学的知見の大原則は、1森林が撹乱を受けなければ更新は始まらない、2更新材料がなければ更新はできない、という二つです。更新させたい種の更新材料(種子●多様な施業は難しいか長伐期施業、択伐林施業、広葉樹の森づくり、針広混交林化、広葉樹林化、水源の森づくり、天然力を活用した更新、複層林施業、将来木施業。これらは、最近に関わった研修や技術相談のテーマです。これまで進められてきたスギ・ヒノキ・カラマツなどの針葉樹による短伐期人工林施業を直球とすれば、変化球の投げ方がわからないということのようです。確かに、多くの人はこれらの変化球を投げたことがないかもしれません。もしかしたら、投げてみたものの暴投になってしまった経験があるかもしれません。そのためか、こうした施業は難しい、その技術は職人技だという声をよく耳にします。本当にそうでしょうか。考えてみてください。スギやヒノキでなくても、育てようとするのはスギ・ヒノキと同じ樹木であり、同じ森林です。やろうとする作や萌芽可能な株)が現地にあれば天然更新が可能かもしれませんし、なければ植栽によらなければならないことは自明です。そもそも、更新がはじまるような撹乱がなければ、まだ更新を考える段階にないこともわかります。「不要なものを除去する」というのは、保育のための技術です。そのとき押さえておかなければならない大原則は、3光条件が十分でなければ樹木は上長成長(樹高成長)できない、4十分な着葉量がなければ樹木は肥大成長できない、という二点です。育てたい個体を育てるためにはなにをすればよいかは、これらの原則からみれば簡単にわかります。上長成長が不十分なら、その個体の樹冠に光が当たるよう、上方にある樹冠を除去する必要があります。十分な着葉量を確保するためには、樹冠に光が当たるようにすると同時に、樹冠の拡張(枝の伸長成長)を邪魔する競合樹冠を除去すればよいのです。MORINOTAYORI 12