ブックタイトル森林のたより 783号 2018年12月

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概要

森林のたより 783号 2018年12月

森林研究所●臼田寿生●詳しい内容を知りたい方はTEL0575ー33ー2585森林研究所まで山地災害リスクを考慮した木材生産のためにこりやすいか否かを判断する必要があります。これら2つの視点を整理すると図1のようになります。保全対象へ土砂が到達する恐れがある危険度1位と2位の箇所では、崩壊が発生すると、人命にかかわる被害になる可能性があることに留意が必要です。特に危険度1位の箇所は、土砂移動も起こりやすいため、基本的に路網の作設や皆伐などの集団的な伐採は不向きであると考えられます。つまり、木材生産を行う森林は、危険度4位の箇所を中心に検討することが望ましいということがわかります。保全対象に土砂が到達する恐れがある斜面の抽出全国各地の土石流発生箇所を調査した資料※3によると、流木を含んだ土砂は下流2km程度まで到達することが報告されています。このため、基本的には、崩土は、土石流化により、下流2km程度まで到達することを想定しておく必要があると考えます。さらに崩土が保全対象へ到達する箇所を斜面単位で判断したい場合には、過去の研究で提唱された崩土の到達距離を推定する式からリスクが高い斜面を抽出することができます(図2)。図2の例では、紫色に塗られた斜面で崩壊が発生すると、保全対象である建築物へ土砂が到達することを示しています。ただし、この図は、机上の限られたデータから作成されており、実際の災害発生時とは異なる可能性があるため、現地の情報も考慮し対象への加害は回避しなければなりません。このため、事業地選定の際には、斜面崩壊が発生した場合に人家などの保全対象へ土砂が到達する恐れがあるかについて、あらかじめ確認しておく必要があります。2つ目の視点は、「山地の崩壊リスク」です。斜面崩壊は、水が集まりやすく、地盤が風化した傾斜地で発生しやすくなります。このため、地図や現地の情報を手掛かりに、対象の森林で土砂移動が起はじめに木材生産の基盤となる路網を作設する際には、地形の改変を伴うため、場所の選定や作設方法を誤ると、斜面崩壊などの山地災害を引き起こす恐れがあります。また、皆伐などの集団的な伐採についても、根系が有する斜面の崩壊防止機能に影響を及ぼすことから、地形条件によっては、山地災害を誘発する恐れがあります。このため、木材生産を行う際には、山地災害リスクに対して十分な配慮が必要となります。そこで、当所では、国の研究機関や大学等と連携し、山地災害リスクを考慮した木材生産を支援するための研究を進めています。今回はその取り組みの一部を紹介します。木材生産における災害リスクの考え方災害リスクを考慮した木材生産を行うためには、次の2つの視点が必要となります。1つ目は「保全対象との位置関係」です。木材生産活動に伴い、万が一、斜面崩壊が発生した場合でも、人家等の保全ながら木材生産を行う場所を検討する必要があります。おわりに木材生産に適した森林を選定する際には、これらの資料を参考にしながら山地災害リスクを考慮することで、木材生産活動に伴う山地災害のほとんどを未然に防ぐことができると考えます。当所では、山地災害リスクを考慮した木材生産に関する技術支援も行っていますのでお気軽にご相談ください。※3「平成26年度流域山地災害等対策調査(流木災害対策手法検討調査)委託事業報告書」(林野庁)図2.保全対象配慮範囲図の例図1.災害リスクの概念図※1:縦軸の交点は傾斜30度以上の危険地形が崩れやすいことを考慮し、現地の状況等から判断※2:横軸の交点は土石流が下流約2kmまで到達することを考慮し、現地の状況等から判断崩土が保全対象に到達する範囲※森脇(1987)の式による(平均式と下限式の併用)建築物MORINOTAYORI13