ブックタイトル森林のたより 792号 2019年9月

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概要

森林のたより 792号 2019年9月

国有林の現場から35二ホンジカの生息実態を探れ!?岐阜県の森林下層植生調査への協力?ニホンジカによる農林業への被害は、シカの生息範囲の広域化、捕獲事業者の減少を背景として、より深刻化を増しています。国有林においても、伐採跡地や造林されたばかりの幼齢造林地などはニホンジカが集まりやすく、植栽された苗木への被害の広がりが主伐・再造林への大きな障害となっています。ところで、野生鳥獣の保護と管理等について定める「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」を所管する岐阜県では、捕獲・被害防除・生息環境管理等の各種対策を推進することによる農作物被害額の低減を目指し「第二種特定鳥獣管理計画(以下、「特定計画」)」が策定されています。この特定計画が目指すニホンジカの科学的管理や総合的管理を行うためには、適切に対象動物の個体群や被害、生息地の状況をモニタリングする必要があるとされています。そこで、岐阜県においては、兵庫県立大学の藤木大介先生により開発された「森林下層植生衰退度ランク(Shrub-layer decline rank ;SDR)調査」が、民有林と国有林との協力、連携のもとで行われています。「SDR調査」は、森林施業や生育条件に影響を受けにくい落葉広葉樹の森林内を調査対象にして実施します。下層植生の衰退の程度を森林生態系の衰退の簡易な指標として用い、また、チェックシートを利用した簡易な目視調査を採用することで、広域かつ多地点の調査を、少ない労務で行えるという長所があります。●今回の調査これまでに、平成26、28年度の2回、調査が行われており、今回の調査で3回目となります。岐阜県全体では、約380地点(メッシュ)もの調査箇所がありますが、そのうち約70地点が国有林に含まれていることから、岐阜、飛騨、東濃の県内3森林管理署が調査に全面的に協力をしています。●調査の難しさ「SDR調査」は、前述のとおり簡易な目視調査ではありますが、それ故に、実際に調査を行う森林官にとっては判断に迷う場合もあり得ます。そのため、調査にあたっては、事前に県から、いわゆる「目あわせ」のために現地説明をお願いし、森林官毎で調査の結果に差が生じないような配慮もしています。また、目視調査ではあるものの、『ササの被度、低木の被度、シカの痕跡の有無等を(総合的に)確認してランクを決めるため、ランクの(見本の)写真は参考程度にしてほしい』といったご指導もいただいています。●最後にニホンジカ食害防除対策には決定打といえるものがないのが現状ですが、今後も、民国の関係者が知恵を出し合い、地域一体となったニホンジカ対策を推進していくことが重要だと考えます。そういった意味でも、今回の調査は、民国が一丸となったニホンジカ食害防除対策のための、重要な取り組みの一つであると考えています。参考文献:岐阜大学附属野生動物管理学研究センター作成「森林下層植生衰退度ランク調査マニュアル」(岐阜森林管理署)▲(参考)SDR:D1の国有林(高山市清見町)▲SDR調査地点の設定(5×5kmメッシュ)MORINOTAYORI11 MORINOTAYORI