ブックタイトル森林のたより 792号 2019年9月

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概要

森林のたより 792号 2019年9月

森林研究所●渡邉仁志●詳しい内容を知りたい方はTEL0575ー33ー2585森林研究所までコンテナ苗による下刈り軽減を考える再造林を低コストかつ確実に実施するため、「初期成長に優れた」コンテナ苗に期待が寄せられています。しかし、全国一斉調査の結果、現在のコンテナ苗には、裸苗に比べ初期成長の優位性がないことが明らかになってきました。当所では育苗時の培土に混入する肥料(元肥)を工夫して苗木の品質を向上させる研究に取り組んできました。ここでは、効力の長い肥料を元肥に用いたヒノキ実生コンテナ苗による、成長促進と下刈り期間短縮の効果について報告します。元肥を工夫した苗木の成長育苗時の一年間と植栽後の一年間効力がある肥料を元肥にした培土で、ヒノキの一年生稚苗を育成し、二年生コンテナ苗を試作しました。これを下呂市内の皆伐跡地に植栽して比較したところ、植栽一~二年目のコンテナ苗の樹高成長量は、裸苗よりも高い水準でした(図1)。これは根鉢に残留した元肥の効果によるものであると考えられます。その結果、コンテナ苗の樹高は、植栽から三年後には約三三cm、四年後には約四〇cm、裸苗を上回っており、かつ両苗間の樹高差は小さくなりませんでした。下刈り期間への影響植栽当年から下刈りを四年間行った結果、この造林地の主な雑草木はススキ(平均草丈一六〇cm)と落葉低木のトサミズキ(平均樹高一五〇cm)になりました。五年目夏期に雑草木との競合状態を調査すると、被圧された苗木は、コンテナ苗区(平均樹高二五七cm)、裸苗区(同二一九cm)ともほとんどありませんでした。このことから、五年目の下刈りは両区とも必要ないと判断できます。雑草木の構成(種類や量)が五年目と同じだったとして、四年目の状態を推定しました。裸苗区(平均樹高一五四cm)では、雑草木に被圧された苗木が六五%に達していた(図2a)ことから、四年目の下刈りは必要だったと考えられます。一方、コンテナ苗区(平均樹高一八七cm)では、被圧された苗木の割合が低く(図2a)、それを被圧している雑草木に高木性種がほとんどなかった(図2b)ため、四年目の下刈りを省略できた可能性がありました。つまり、この造林地では、元肥を工夫したヒノキ・コンテナ苗によって、下刈り期間を一年間短くすることができた可能性があります。◆◆◆◆◆今後は、育苗時における更に効果の高い施肥条件を検討する必要があります。また、雑草木の構成により苗木への影響が違ってきます。雑草木のタイプ分類と、それに合わせた下刈りスケジュールの検討が必要です。図1苗種別の年樹高成長量(↑上)図2苗木と雑草木の競合状態(a)および雑草木の構成(b)(←左)MORINOTAYORI13