ブックタイトル森林のたより 793号 2019年10月

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概要

森林のたより 793号 2019年10月

所正幸(65)本田亮平岐阜県恵那市平成29年取材「森の名手・名人」とは、森に関わる仕事や地域生活に染み込んだ営みのうち、優れた技をもってその業を極め、他の模範となっている達人で、毎年、全国で約100名が認定されています。岐阜県においては、現在、51名の「森の名手・名人」が認定されています。この「森の名手・名人」を「森の”聞き書き甲子園“」に参加した高校生が「聞き書き取材」をしたものの中から誌面の関係上要点を抜粋したものです。なお、年齢、住所、学年は取材当時のものです。50森の名手・名人シリーズ兵庫県立香住高等学校2年名人聞き手1.建具っていうのは建具は家の中で動かすものやね。壁とは違って間仕切りとかいろいろ明かりを入れたりするもんやけど、まず第一条件が動かすってことやね。調子よく動かないと。後は枠を臍ほぞで入れて、真四角ばっかじゃないけど四角い容れ物作ってその中にいろいろ入れていくわけやね。日本は、組子物が結構盛んなもんでね。一番簡単なのが障子なんやね。和紙を貼って明かりを取り入れる。今はどっちかというと工芸的な感じになってきちゃってる。2.道具は一番最初の信州の親方の時に、普通は一人前になったときに道具を全部買ってもらえるんやけから作ってほしいっていう仕事だけですね、手間は。後は建築屋さんの仕事、建築家さんと大工さんの仕事だけやね。個人の場合は写真見たり、簡単な絵を描いて、こういうやつでどうでしょうかって言って、気に入ってもらえればそれ作るんですけど。やっぱちょっと凝ったものを欲しがられるね。この間は、恵那市の木工展があった時に見に来てくれて、ちょっといい建具を2本だけやけど作りたい、って言っておいでなすったもんで。家で写真やらいろいろ見せて、こういうやつでこういう風に作ったらってアドバイスしたら、それを家に入れてほしいって言われるんで。作って入れさせてもらいました。材料はそれなりの物を使うもんで、だいたい材料代から塗装代そこら全部入れても4、50万やけどね。もし400万円で材料代が50万かかったとすると、350万は手間やね。高いように見えるけど、普通の仕事したと同じ手間賃やからね。結局これでも160日くらいかかってるんやけど、日数だけでね。日曜日とか休みの日を全部取っ払っちゃって、作った日を足すと170何日だったと思うけど。で結局日数がものすごくかかるもんで、金額が高くなっちゃうんや。普通の仕事した方が楽やって言う人もいるけど、それだけじゃやっぱたるい(つまらない)もんで。作ったものを木工展とかで見せることによって、今の自分の知名度があがるもんでね。4.自分への挑戦全国大会に手を出したのは14、5年くらい前ですかね。今の組子はだんだん細くなってきてるけど、今作ってる組子は1mmやわ。で、もっと細いのをこの中で組んでいくもんで、だんだもんで。ただ一番最初は、ひと月5千円やったもんでね。かんなが1万5千円や2万円してた時代やもんで、かんな一丁も買えないんや。やもんで、親方がかんな減ると買っちゃくれやしたけど。一人前になってから自分の道具やもんで、全部自分で揃えていったんよ。3.仕事は喋るの苦手で営業一切しないもんで、知り合いの大工さんからちょっと仕事があったり、知り合いの建具屋さんから材料を持ってきて手間だけで作って欲しいって言われて、結構手間をやりましたね。最初のうちは、自分とこでもできるけど忙しいもんで頼むっていう形もあるんのと、うちでやるには難しいで、やってくれっていう仕事と両方やね。で、今はもう自分じゃちょっと作れないど。かんなやのみやらだいぶ買ってもらっとったけど、全部は買ってもらってなかったもんで。その時に服を買えって2万円と、退職時に4万円もらったんよ。それ以外は一銭ももらっとらんね。最初はほとんど何もなしやもんで、与えられたもんじゃなしに自分の道具だけで仕事してた建具職人建具は、自分を表現するもの木を切ったり、組子の溝を彫ったりする道具MORINOTAYORI 14