ブックタイトル森林のたより 793号 2019年10月

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概要

森林のたより 793号 2019年10月

-喜寿記念同窓会、ヨツスジハナカミキリ-【第339回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohira令和元年7月。高校の同窓会が開催された。場所は高山市の某ホテル。久しぶりに友と、飲みながら語り合える。始まる前から胸がわくわくする。会場には「喜寿記念同窓会」と大きな看板。その回りには人、人、人。皆80歳に近い老人ばかりだ。しかし、皆若々しい。とても喜寿を迎える老人だとは思えない。「久しぶり。元気か」、「お陰様で」。こんな会話があちこちから聞こえる。出席者は61名、このうち女性が24名。相変わらず容姿端麗?だ。札幌、広島、東京など遠方から駆けつけたものもいた。遠方からも引きつける同級生という言葉。不思議な3文字だと思う。驚いたのは恩師が来ていたこと。先生とは60数年ぶりの再会だ。大変元気でとても90半ばとは思えない。当時のことが頭をかすめ懐かしくなった。また、今年は令和になったばかりなので、この元号についての講演があった。講師は同級生のM氏。著名なれなかった。宿泊場所は高根村の小学校で参加者10人ほど、夜は寒くて眠れなかったこと以外は記憶にないのである。特にどんな虫を採集したのか。このことすら思い出せなかった。ショックだった。これが後期高齢者のたどる道かと思うと悲しくなってきた。またある女性は「今でも虫を採っているの。尊敬するわ」。すると別の女性も「そうなの。すごいわね」。こんなことを言われ照れくさくなった。今までは「まだ虫を追っかけているの」、「あんな小さな虫のどこがいいの」などと冷ややかな目で見られていたからである。私はお世辞とは思いつつ嬉しくなった。ここにいる女性とは昔からの友達で、今でも「○○ちゃん」、「○○さん」、時には「○○子」と呼び捨てにすることもある。「みっちゃん、若いね。顔が艶々しているよ」、「ほんと。嬉しいわ」。喜寿を迎えてもこんな会話が出来る。これが同級生だと思った。国文学者だ。「まさか、あいつが。こんな偉い人に」と驚いた。××××講演時間は短かったが、よく理解出来た。さすがこの道の権威者だと敬服した。この同級生は死ぬまで古文の研究を続けていくというからすごい。私は情けなくなった。年々、虫に対する情熱が薄れているからである。また、今回は厳しい現実を目の当たりにした。すでに52名が故人となっていたのである。特にこの2年間だけで20名。ショックだった。これが喜寿同窓会か。米寿の時は…などと考えると悲しくなってきた。当時の友の顔が目に浮かんできた。その中××××に女性のHさんがいた。卒業してから全く会っていないので、乾杯。しかし、すぐに席を離れることはできない。こちらの習慣で「めでた」というお経のような歌がでないと、酒を酌み交わすことができないからだ。この間、20分。短いようで長い。「この習慣、まだ続いているの」と隣席の友。やはり長く感じているようだった。さあ、宴会開始だ。飲んで、食べて、語る。いつもの光景だ。しかし、全員後期高齢者。酒や食事の量は少なくなっている。しかし、話す時間は前より多い。盃を手にしたままぺらぺら喋りだし、いつまでも続く。話題は病気や親の介護、それに家族のこと。これはいつものことであるが、今回は年金の話題が多かった。出席者のほとんどが年金生活だからだ。ある女性は、東京から高山までの旅費が往復4万円。それに宿泊料、会費などを含めるとかなりの出費。出席するのを考えたという。それが北海道から来た人がいる。「すごい額だろうね」と私に聞いてきた。私はわからなかったので、その友に聞いた。驚いた。4万円以下だったのである。なぜ、こんなに安い。その理由を聞いた。制約はあるけど格安航空を使ったからだという。「年金生活者はいかに安くできるか。頭を使うべきだよ。認知症の予防にもなるからね」と、友は笑った。記憶はほとんどない。結婚してブラジルで生活していたので、どの同窓会も欠席。存命なら、恐らくこの喜寿同窓会には出席したかったのではないか。こんなことを思うと胸がつまった。「まさか、あいつが」と驚いたのがM氏だ。高校時代無二の親友で、いろいろなことで行動を共にした。忘れられないのが高3の時にD氏と3人で高根村野麦から乗鞍岳へ登った時である。あとわずかという所で、M氏が高山病になり、動けなくなってしまった。回復するまで、私は昆虫採集。花にいる虫を探したり、ハイマツを叩いたりした。しかし、虫はいない。唯一採れたのがヨツスジハナカミキリであった。この時の記憶が今でも残っている。2時間ほどで彼は回復。頂上まで行くことができた。あの時、動けないまま、夜になってしまったらどうしただろう。今思うと回復してくれて良かったと思う。その彼とはもう会うことができない。悲しい。さようならM君。いよいよ閉会だ。幹事が挨拶。これが良かった。「この同窓会は長くは続かないだ××××ろう。こうなれば誰が最後まで生き残女性数人と話していたときAさんが「高3の時、生物部で一緒るか競争だ。お互い頑張ろう!」にキャンプをしたけど、誰がいた」と聞いてきた。しかし答えら▲ヨツスジハナカミキリMORINOTAYORI 8