ブックタイトル森林のたより 795号 2019年12月

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概要

森林のたより 795号 2019年12月

-町内盆踊り、アシナガバチの巣-【第341回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohira今年の夏はまさに猛暑。異常に暑かった。特に梅雨明け後は、35度以上の日が何日も続いた。これだけ暑いと、後期高齢者の私にはこたえた。体がだるくて、食欲がないのである。こうなると気力も萎えてくるのか、あれだけ好きだった虫採りにも行く気が起きなくなった。これでは駄目だと思うものの、暇があれば横になってテレビを見るという生活。こんな時、町内の盆踊り大会が近づいて来た。この盆踊りは前から楽しみにしていた。孫のチビちゃん二人が太鼓をたたくからである。その日が来た。ところがこの日も朝から異常に体がだるくて、何もする気が起きないのである。盆踊りへ行くのは止めようと思った。一日中寝て過ごした。それでも体は回復しなかった。午後5時。盆踊りの歌が流れてきた。チビちゃんの太鼓たたきが始まる時間だ。その姿が目に浮かんできた。不思議なことに体が楽になってきた。会場へかけつけた。チビちゃんは「お爺ちゃん、来てくれたの」と嬉しそうであった。この笑顔。私も嬉しくなった。××××太鼓の音色で踊りが始まった。皆が踊り出した。チビちゃんたちは汗をかきながら太鼓を叩いていた。先生は80半ばの老人。大きな声で指導している。子供たちへの愛情と熱意が伝わってきた。しかし、この先生、身を引きたいらしい。教えるのがきつくなり、体が持たないからだという。それでも続けているのは、太鼓が生き甲斐なのだと思った。チビちゃんを含め子供たちの枹(ばち)さばきは見事であった。ここまでにした先生の教え方。もう少し続けてほしいと思った。そのうちに人が踊り出し、だんだん増えていった。しかし、ほとんどが素人。手を振ってノロノロ歩いているだけだ。途中から浴衣姿の婦人の集団が加わり、踊り始めた。手と足の動きが実に見事で、これが盆踊りだと思った。その後も人が次々に増え、大きな輪となった。その中にもんぺ姿の老女がいた。歳は80後半?背が低い上腰が曲がっているので、動作は鈍い。それが踊り出すと、手や足の動きは皆と同じ。見事な踊りであった。休憩となった。老女を見て驚いた。普通に歩けないのである。手押し車を押して歩いているのである。それが踊り出すとあの見事な舞い?しかも休憩をはさんで2時間も踊っているのである。盆踊りで踊りを楽しむ。これが老女の生き甲斐。太鼓の年老いた先生と同じだと思った。子供たちに太鼓を教えている先生と踊っている老女。この姿が心に残った。寝ていては駄目だと思った。××××二日目。この日も猛暑日。朝から暑い。やはり体がだるい。しかし、今日は動いた。まず、外で飼っているオオクワガタ成虫の飼育槽の掃除を始めた。しかし、どのオオクワガタも元気ない。餌を与えても近づかないし、仰向けにするとそのままなのである。これは熱中症だ。そんな気がしたので、涼しい室内に移動した。しばらくしたら動き出した。明日だったら全滅したかも知れない。次に金魚とメダカの水槽の掃除をした。夏は水温が高くならないよう、水槽の上に日よけを置いている。しかし、それでも水は熱くなっている。この水でよく生きているものだと思った。ところが、メダカ容器1槽の日よけが落ちていた。水面には死亡している多数のメダカが浮かんでいる。全滅であった。水は湯のように熱かった。これは私のミス。メダカには悪いことをしたと思った。さらに蜂の巣探しをした。娘から子供が刺されるからと何回も言われているからである。真剣に探した。3個見つかった。しかも地面すれすれの所とか庭木上部の葉が繁茂している中など、簡単には見つからない所に作っていた。今までは主に家屋の軒下であったが、ここではすぐに見つかるので場所を変▲密集している枝の中に造った巣えた。ハチが賢くなったのだと思った。このほか草引きや庭木の枝払いなどをした。汗だくになったが、気持ちがよかった。××××二日目は昨日よりさらに大盛況であった。開始前からビールを飲み始めたグループがあちこちで見られた。その一つが我が家。喉を通りすぎるビールの味。昨日より美味しかった。これは昼間働いて汗を出したからだろう。盆踊りは昨日と同じ手順で進んだ。チビちゃんたちは真剣に太鼓を叩いていた。時々聞こえる先生の大きな声。それに応えるチビちゃんたち。力一杯太鼓を叩く。絵になる光景であった。踊子たちで目に付いたのは、やはり浴衣姿の婦人の集団。やはり見事な踊りだ。ところがあの老女の姿がない。何か物足りなかった。昨日踊り過ぎて疲れたのだろうと思った。しかし、そうではなかった。少し遅れて老女が姿を見せたのである。曲がった腰で歩くのがつらそうだ。それが踊り出すと一転して軽い足取り。昨日と同じだ。ひたすら踊っている。踊りが終わった。しかし、いつもと違う盆踊りだった。太鼓を教えている老人と、踊っている老女の姿に心が打たれたからである。私の趣味は昆虫採集。これを採って調べて記録に残す。これが生き甲斐だった。これが崩れかけているので直さなければと思った。これを教えてくれた今回の盆踊り大会。思い出に残る二日間であった。MORINOTAYORI 10