ブックタイトル森林のたより 796号 2020年01月

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概要

森林のたより 796号 2020年01月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹ハコベⅠ173新年早々、お詣りに行く神社の杜(もり)で、日だまりに咲くハコベを見つけました。ハコベは利尿や浄血の効能がある野菜として、人日の節句の朝に七草粥に入れられます。ハコベはその名が「繁栄を運んでくる。繁栄がはびこる。」と、昔から縁起を担いで食されてきた歴史があります。このハコベの名の由来は諸説あり、茎の中にある白い維管束を、絹糸の帛(はく)に見立て、帛糸を引き、群がり繁る草を意味する「帛繁(はくべら)」とする説があります。ちなみに中国名の「繁縷(はんろう)」も繁茂しやすく、茎の中に縷(る)のような維管束があることを指し、江戸時代中期の学者、新井白石は中国名の繁縷(はんる、はんろう)がハクヘラに転訛したと解説しています。また、帛は同じ意味で、5つの花弁が箆(へら)を意味する「帛箆」という説もあります。他には、平安時代の本草書『本草和名(ほんぞうわみょう)』にも記された「波久倍良(はくべら)」説。江戸時代後期の国語辞典『和訓栞(わくんのしおり)』にも、「はくべらは葉を配り敷く意味だろう」ということが記されているように、葉の配列が良いことを示す「葉配り」説。茎が伸びて早く蔓延し、種が落ちて芽が繁茂する様子から「はびこりめむら(蔓延芽叢)」が変化して「はこべら」になった説もあります。このように、ハコベはとにかく日当たりの良い原野や畑の低湿地に叢生する2年草なのです。ハコベは七草の中でも、特にアクが少なく口当たりの柔らかなものですが、単に柔らかいわけではありません。緑色で横にはって広がる茎の中には、白く堅い筋状の維管束があり、人に踏みつけられてもなかなか切れません。一般的に私たちが「ハコベ」と呼んでいるのは、コハコベ(Stellaria media)を指すことが多いのですが、図鑑によってはミドリハコベを指すとするものもあります。コハコベによく似たものにハコベ属のミドリハコベや、ウシハコベ属のウシハコベがあります。簡単に解説すると、コハコベやウシハコベの茎は白緑色~暗紫色ですが、ミドリハコベは緑色で、ウシハコベは全体的に茎も葉も大きいのも特徴です。ハコベ類は冬でも花を咲かせ、コハコベは花柱3個、雄しべ-17個で、ミドリハコベは花柱3個、雄しべ-510個、ウシハコベは花柱5個と見分けられます。しかしコハコベとミドリハコベの見分けは難しく、両者を比較するとコハコベは茎が少し紫褐色を帯びて全体的に小さく、ミドリハコベは緑色で大きく、主に薬用や食用に利用されるので、次回紹介します。▲冬でも白い花を咲かせるコハコベMORINOTAYORI 4