ブックタイトル森林のたより 800号 2020年05月

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概要

森林のたより 800号 2020年05月

活かす知恵とを森林人88●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー講師●前野健プロダクトデザインからの木材利用のアプローチ将来的に地域の製材所や森林組合にある、簡易な加工施設でも製作できるレベルまで製作方法を単純化していきたいと考えています。「地元の木を生活の中で使う」という暮らしは、思った以上に家具を使う日常に満足感を感じることができます。これまで作ることが難しいと言われていた杉とヒノキの家具作りですが、視点の置き換えとデザインのアプローチの工夫によって、地域材の活用につなげられたら良いなと思います。隅木(すみぎ)という補強を使い、構造を強くしている。試作した杉とヒノキのダイニングチェア林業の学校でモノ作りを教えていると「杉やヒノキで家具を作れませんか?」という相談をちょくちょく受けます。要望にお応えしたい気持ちは山々ですが、自分がこれまで家具作りに使ってきた広葉樹に比べ、杉やヒノキは材質が柔らかく強度も劣ります。杉、ヒノキで広葉樹の家具と同様の強度を出そうとすると、どうしても部材を太くする必要があります。すると強度はクリアできても、今度は見た目が野暮ったくなってしまいます。仮に杉やヒノキで家具を作ったとしても、それが格好悪ければ誰も使ってはくれません。また、木材産地を経済的に潤すためには、その地域内で製造・販売できることが理想的です。どこの地域でも簡易な加工設備でも製品化ができる、杉とヒノキで出来た格好の良い家具。さあ、これを実現するとなるとなかなかの難題です。今、実験的に取り組んでいる杉とヒノキの椅子の開発では、これらの課題をクリアできるよう、設計条件をデザインに落とし込みながら試作作業を進めています。特徴的なのは、加工工程は少なめにビスを補強に使ったりもしていること(もちろん、ビスが目立たないよう、格好悪くならないよう注意しながらです)。あえて木組みにこだわらず、合理的にかつ技術的に簡易に作ることを重視し、強度と意匠を兼ね備えたデザインというものを考えています。現在、この試作品の杉とヒノキのダイニングチェアをモニター調査的に自宅で使ってみています。肌にあたる部分に杉を使っており、サラリとした感触が心地よい反面、材質は柔らかいため表面はけっこう傷だらけになりました。日常生活の中で良いなと思うのは、重さがとても軽いこと。掃除のたびに動かしても苦にならない重さです。使っていて感じるのは、実用性に関してはいたって普通の椅子だなということです。少し軽くてキズが付きやすい、けど普通に使える椅子です。いろいろ試しながらではありますが、杉とヒノキで実用的な家具は作れますし、家具として十分に使える木だというのがここまでのトライアルでの実感です。今後のブラッシュアップとしては、現在木組みで行っている接合部分を、より簡易的な加工方法で製作できるよう仕様の改良を進めたいと考えています。専用機械を使わずに、汎用的な木工機械で、全ての加工ができる設計にすることで、MORINOTAYORI 12