ブックタイトル森林のたより 802号 2020年07月

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概要

森林のたより 802号 2020年07月

-パンを食べた、カマキリ-【第348回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohiraカマキリ。この虫は誰でも知っているであろう。棘のある前足。これで威嚇する姿。一度目にすると忘れることができない。数年前の夏、我が家の庭にオオカマキリ(以下、カマキリ)がいた。見つけたのは孫のY君。小学1年生だ。捕まえようとした。するとカマキリは足を広げて威嚇してきた。Y君は手が出なかった。しかし、興味があるのかいつまでも見ていた。私はY君とこのカマキリを飼うことにした。数日後、モンシロチョウを飛べないようにして入れた。しばらくしたら「つかまえた!」とY君の大きな声。前足でモンシロチョウを捕えていた。この後、妹のちびちゃん(保育園児)二人も加わり、3人で餌を与えた。しばらくしてカマキリ2匹を追加した。ちびちゃんたちが餌を与える。それを食べるカマキリ。これを楽しそうに眺めていた。ある日、姉のちびちゃんが「カマキリが食べられている」と私を呼びに来た。大きなメスがオスを食べていたのである。Y君も驚き、いつまでも見つめていた。しかし、9月半ばに残りの2匹も死んでしまい、この年のカマキリの飼育は終わった。来年はもっと大きな飼育箱で飼おうと思った。××××しかし、Y君はカマキリを飼うことはなかった。クワガタムシに魅力を感じたからである。そこでオオクワガタを飼い始めた。次々と大きな成虫が発生した。中には6cmを超えるオスもいて、Y君は大喜びであった。しかし、これも興味が薄れていった。虫が好きでは仲間外しにされるからである。代わりに、ゲーム、パズルに夢中になり、友達も増えていった。これが今の子供か。と自分が昆虫少年だった頃を思い出し、さみしくなった。それが今年の3月、再びカマキリを飼うことになった。原因は新型コロナウイルス(以下、コロナ)である。2月頃から各地で死者が増え続けたので、学校が長期休校になった。しかも、この間は自宅で過ごせという。Y君は大喜び。二人のちびちゃんと好きなゲームやパズルを楽しんでいた。しかし、そのうちに飽きて、庭にいる虫やダンゴムシなどを探し始めた。3月12日、Y君がカマキリの卵が入っている卵鞘(らんしょう)を見つけた。この中から、たくさんのカマキリが出てくることを説明した。しかし、よく理解できないようであった。そこでこの卵鞘を飼育箱にいれ、様子を見ることにした。××××3月17日、「おじいちゃん、カマキリの子供がたくさんいる」と姉のちびちゃん。飼育箱の中には孵化したばかりのカマキリ。ものすごい数だ。私自身、目にするのは初めてであった。何匹いるのだろうと数え始めた。しかし、動き回るのでわからない。200匹以上はいると思われた。まず、餌を与えなければならない。カマキリは肉食性で、昆虫などを食べている。餌探しをした。しかし、捕れない。1週間経過した。しかし、カマキリは生きている。共食いをしているのだろうと思った。さらに数日後、妹▲孵化したばかりのカマキリの子供のちびちゃんが「おじいちゃん、カマキリが肉まんを食べているよ」と知らせに来た。飼育箱を見ると、肉まんにカマキリが6匹止まっていたのである。肉まんは妹のちびちゃんが「カマキリは何も食べていない。かわいそう」といったので姉のちびちゃんが、自分の食べていた肉まんを入れたとのことであった。カマキリは空腹になれば何でも食べる。そんな気がしたので、肉まんの代わりに食パンの上にヨーグルトをのせて与えた。カマキリも水分を必要とすると思ったからである。するとカマキリはパンにもヨーグルトにも集まってきた。自分では思いもつかない、ちびちゃんのこの発想。そのお陰でカマキリの飼育が続けられたのである。××××4月5日、思いもしないことが起きた。今のカマキリが孵化した卵鞘を別の容器に入れていたら、ここから再びカマキリが孵化してきたのである。その数300匹以上。前回と合わせると、この小さな卵鞘から500匹以上のカマキリが生まれてきたことになる。しかし、成虫はそんなに多くない。これは肉食性のカマキリも成長過程でほとんどが外敵にやられるので、たくさん卵を産む。その道具として考えたのが卵鞘。獰猛なカマキリも厳しい自然界を生きているのだと思った。小さなカマキリは動きが実に素早い。蓋をあけるとすぐに逃げ出す。世話が大変なので、後で発生したかまきりは庭に放した。飼育箱にパンを入れると集まってくる。食べていることは間違いない。しかし、死亡しているのがよく見られるようになってきた。やはり虫などの餌が必要だと思った。そこでハエ、テントウムシ、カメムシなどを与えたが食べない。大きすぎるのである。小さなカやコバエなどが必要なのだ。しかし、たくさん採るのは難しい。ほかの餌を必死に探した。ようやく見つけた。レンゲに寄生するアブラムシの幼虫だ。茎の先端に集団でいるので捕るのは簡単だ。これを与えると前足で器用につかまえて食べている。ちびちゃんたちは「また食べた」と楽しそうに見ている。4月下旬、大きさが1.5cmになった。成虫になるのは夏。まだまだ先だ。これからも、ちびちゃんたちと見ていくつもりだ。MORINOTAYORI 10