ブックタイトル森林のたより 802号 2020年07月

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概要

森林のたより 802号 2020年07月

普及コーナーキノコ生産振興に向けて■岐阜県立森林文化アカデミー今井和重されるなど、一部で菌床用材料の原木の確保が課題になりつつあります。これらの状況から、キノコ生産用原木の県内供給量を拡大するため、原木林の造成や、原木生産に必要な技術・コスト等を検証し、普及することとしました。また、県内の森林資源を最大限に活用するため、県産原木等の利用促進、キノコ生産に活用できる樹種の拡大、利用可能な原木林の情報の集約・提供を進める予定です。生産対策全国のキノコ生産量は増加傾向にあり、平成10年から平成30年の間に約22%増加しました。岐阜県では、平成28年まで生産量が大きく減少しました。その後、大規模な生産施設の整備などが進み、生産量は増加に転じました。しかし、増加率は全国と比較して依然下回っています。原木シイタケ生産者数は高齢化や後継者不足等により年々減少しており、過去15年間で約60%も減少しました。また、菌床シイタケ生産者数は、原木シイタケと比べ比較的緩やかに減少していますが、特に小・中規模生産者の減少が大きい特徴が見られます。一方で、近年になって大規模生産施設の整備が進み、県内の菌床シイタケ生産の約85%が大規模施設で生産されています。岐阜県のキノコ生産は、生産量・生産者数ともにシイタケの占める割合が高く、平成30年は全生産量の約6割を占めています。しかし、最近になってキクラゲの生産量が大きく伸びはじめに岐阜県の栽培キノコ類の生産額は約35億円(平成30年農林水産統計)で、林業産出額の約37%を占めており、山間地域の重要な収入源となっています。キノコ生産の状況は、産地間競争に加え、安価な輸入菌床の増加などにより、販売価格は下落傾向にあります。また、原発事故の影響で、原木等生産資材の急激な価格高騰など、キノコ生産を取り巻く環境は厳しくなっています。一方で、岐阜県産乾シイタケが「大嘗祭」に共納されるなど高い評価を得ています。近年は食に対する消費者の健康・安全志向が高まり、海外からの注目も高まっています。このような状況から、キノコ生産の一層の振興を図り、岐阜県の特産品としての魅力を構築するため、「岐阜県特用林産物の振興方針(キノコ類)」を策定しました。策定にあたって、キノコ生産者をはじめ関係者の方々の意見を参考に、林業普及指導員のほか、県庁県産材流通課、森林研究所、森林文化アカデミーの特用林産担当者で検討を重ねました。方針は1キノコ生産量の増加2キノコ生産者の増加3原木生産量の増加を目標に取りまとめましたのでご紹介します。原木等生産資材対策東日本大震災の発生以降、シイタケ原木の最大の供給地であった東北地方からの供給が止まり、全国的に原木不足の状況が続いています(図|1)。これに伴い、原木価格は高騰し、キノコ生産(特に原木シイタケ)の経営コストを押し上げる要因となっています。また、県内では伐採者の高齢化や、原木の大径化が進んだことで、良質な原木の安定供給に支障をきたしています。一方、菌床用オガコは、県内からの調達が80%以上と高水準で推移していますが、近年になって県内に大規模な生産施設が整備るなど、「新しい品目」の生産が増加しています(図|2)。生産者数の増加に向け、新規参入を促す必要がありますが、初期投資の軽減に加え、新規参入者が安心して生産が開始できるよう技術的なサポートが望まれています。また、既存の生産施設の老朽化が進み、設備の更新や拡充が課題となっています。加えて、近年の異常気象等により、栽培環境が不安定化しており、環境の変化に応じた資材や品種、栽培技術の開発などが求められています。これらの状況から、参入初期の経営を安定化させるため、生産開始から収穫まで一年以上を要する原木キノコ生産に対し給付金の支援を行います(菌床キノコ栽培は、農業関係の制度で対応しています)。また、新規参入や既存生産者の規模拡大を促進するため、イニシャルコストの軽減に向けた設備投資に対する支援や未利用施設、機械等の活用を促します。その他、キノコの生産量(収穫量)の安定化を図るため、栽培環境の変化や病害虫に対する栽培技術の開発等を進めるとともに、新規参入者や既存生産者への支援を強化します。販売対策キノコ類の輸入量は、平成13年のセーフガード暫定措置以降大幅に減少し、その後も減少傾向にあります。しかし、シイタケ菌床の輸入量は年々増加しており、平成30年には2万トンを上回りました。菌床の重さの1/3がシイタケの発生量と推定されており、平成30年は全国の生シイタケ流通図ー1キノコ用原木の推移図ー2キノコ類生産量の推移MORINOTAYORI 14