ブックタイトル森林のたより 803号 2020年08月

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概要

森林のたより 803号 2020年08月

結果として枯れマツと健全なマツにおける収率の差異は3%程度と僅かであった。d.炭の密度、精煉度製炭した炭をある程度の大きさに切り、幅15cm×奥行45cm×高さ13cmの段ボール箱に詰め、重量を測定し、密度を求めた。また、分類毎に炭をc.製炭水土里隊の基地にある炭窯で製炭を行った。材による違いが確認できるよう、窯内をステンレス製の金網で区画し、1回につき2種類の材で製炭した。1回目は枯れマツ2種、2回目は健全なマツと枯れマツを製炭した。できあがった炭は、材の種類、窯内の位置(奥、中央、手前)と日時によって分類し比較した。また、炭の収率を測るため、各材ごとに円盤を作成し、乾燥前、乾燥後、製炭後の重量を測定し、材の含水率と収率を比較した。円盤の製炭は円盤を窯の中央に配置し、ステンレス製の網で包み判別できるようにした。20個体選び、精煉度計を用いて精煉度(電気抵抗値による度合で炭素含有量によって)を計測した。結果、枯れマツと健全なマツにおける密度の差はみられなかった。また、精煉度はマツの状態による違いはみられず、製炭時の温度変化(焼き方)による違いがみられた。e.炭の熱量コーンカロリーメーターを用いて、枯れマツで製炭した炭の総発熱量を測定した。結果は4722cal/gとなり、広葉樹平均程度の熱量となった。f.鍛冶屋へのヒアリング製炭した炭を刀剣鍛冶屋に持ち込み、実際に見ていただき感想をヒアリングした。その結果、「本研究の炭は、岩手県産の炭と比べて軽いが、利用は可能である。」「刀剣鍛冶の工程においては、折り返し鍛錬には本研究の炭より締まった炭がよく。本研究の炭は焼き入れの時に向いている。」とのコメントを頂いた。g.腐朽した材の製炭腐朽が進みより状態が劣悪な材についても製炭し、炭の状態を確認した。その結果、腐朽が相当進んでいても炭にはなるが、明らかに軽く、炭としての品質が著しく悪くなることが確認された。5.考察各測定の結果から見て、松くい虫被害を受けたマツであっても腐朽が進んでいなければ、炭の品質は健全なマツと大差なく、刀剣鍛冶用の製炭においても枯れマツが利用可能であることが確認された。また、今後の課題として、折り返し鍛錬に向くより締まった炭を作る製炭方法の検討が挙げられる。6.参考資料中村克典・大塚生美(2019)『森林保護と林業のビジネス化』、全国森林病虫獣害防除協会(1997)『松くい虫(マツ材線虫)―沿革と最近の研究―』、農林省林業試験場(1973)『新版木材工業ハンドブック』図2円盤の重量、含水率、収率図1窯の区画図(右は窯内の写真)図3各分類の炭の密度図4各分類の炭の精煉度MORINOTAYORI11 MORINOTAYORI