ブックタイトル森林のたより 803号 2020年08月

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概要

森林のたより 803号 2020年08月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹センニンソウ180暑い夏に花を咲かせるセンニンソウ。センニンソウ(Clematis terniflora)はキンポウゲ科センニンソウ属のつる性多年草です。つるは長く伸び、節ごとに葉を対生させ、葉は3~5枚の小葉を持つ奇数羽状複葉です。小葉は卵状楕円形、葉柄を手のように使ってほかの植物や障害物に絡みついて、自分自身を固定して伸びていきます。8~9月に茎の先端付近の葉腋から三出状の散房花序を出し、多数の白い花をつけます。4枚の白い花弁に見えるのは萼片で、中央部に数個の雌しべと、たくさんの雄しべを咲かせます。センニンソウは痩果の先につく羽毛状の白い毛を、仙人の髭に例えて「仙人草」と名づけられました。この白い毛が美しいため、花が終わっても秋遅くまで楽しめ、この毛を利用して種子散布する仕掛けになっています。属名のClematis(クレマチス)は、センニンソウ属と呼ばれますが、クレマチスとはギリシャ語で「枝や巻きひげ、巻いた蔓」を意味するklema(文献によってはclema)に由来します。種小名のternifloraは「三出葉、三つの葉」を意味します。同じセンニンソウ属の中国産シナボタンヅル(Clematischinensis)などの根は、生薬で威霊仙(いれいせん)と呼ばれ、神炎が数年間治まるとされます。この水疱はキンポウゲ科植物の多くに含まれる有毒成分プロトアネモニンによるもので、茎や葉から出る液体が皮膚に付着すると水疱が、誤って口にすると胃や腸の粘膜が炎症を起こし、血便になることもあるのでご注意ください。地域によってはセンニンソウの茎や葉を魚捕りの魚毒に利用したり、ウジゴロシ(蛆殺し)と称して汲み取り式便所に入れて殺虫剤に利用しました。また牛が牧草と一緒に食べると歯が抜けるとか、本能的に食べないとされ、ウシノハコボレ、ウシクワズ、ウマクワズなどとも呼んだそうです。▲白い花が美しいですが毒草です経痛やリウマチに用いられます。幕末に岐阜県大垣市で活躍した蘭方医で、日本初のリンネ分類による『草木図説(1856-1862年)』を著した飯沼慾斎(いいぬまよくさい)は、木部巻六の中でセンニンソウについて「原野ニ多キ蔓草・・・泡ヲ発シテ諸患ヲ治ス・・・」と説明しています。また佐渡奉行所編の『佐渡志(1816年)』には、「仙人草、方言ふつくさ、有毒、不可食、皮膚に貼して水毒を吸い、泡を発する効あり。」と記されています。日本では古来、キンポウゲ科のセンニンソウやケキツネノボタン、ウマノアシガタ等を扁桃腺炎や咽頭炎、気管支喘息、神経痛、リウマチ等の療法に用いてきた歴史があります。扁桃腺炎にはセンニンソウの生葉少量を軽く揉み、下腕の皮膚に貼ると皮膚に水泡ができますが一日程度で完治し、その後扁桃MORINOTAYORI 4