ブックタイトル森林のたより 803号 2020年08月

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概要

森林のたより 803号 2020年08月

-3か月で9cmに成長、カマキリ-【第349回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohira今回もカマキリの話をしよう。前回は卵から孵った子供がパンなど食べて1.5cmになったところまでお話しした。しかし、この後が大変になってきた。パンを食べなくなったからである。カマキリの子供は小さな虫しか食べない。ハエやアブなどを採って与えた。しかし、カマキリは100匹以上もいるので、毎日与えるのは無理。餓死するものが出てくるだろうと覚悟した。しかし、6日経っても皆元気。何故。首をかしげた。カマキリは雨が降り続くと、何日も餌を捕ることができない。だから空腹に耐えられるような体になっているのではないか。そんな気がした。ある日姉のちびちゃんが「カマキリが食べられている」と知らせに来た。カマキリが別のカマキリを食べていたのである。やはり腹が減ると、共食いが発生する。すぐに餌を与えなければと、餌採りをした。しかし、たくさん採れない。この間に共食いがさらに激しくなった。このままでは全滅してしまう。そうなると、ちびちゃんたちががっかりするだろう。神頼みをしながら大量に採れる虫を探した。しかし、餌となるような虫は見つからなかった。カマキリの飼育は難しいと、半ばあきらめかけているとき、先端部が黒くなっているレンゲが目に入った。そこには小さなアブラムシがたくさん付着していた。これだ!と胸が弾んだ。しかもアブラムシの付いている、先端部の黒いレンゲはたくさんある。神頼みの効果があったのだと嬉しくなった。××××このアブラムシをカマキリに与えた。すぐに前足で捕まえて食べ始めるものが何匹もいた。やはり空腹だったのだと思った。ところがどのカマキリも1匹食べただけで腹がふくれるのか、2匹目を口にしなかった。静止したまま動かないのである。30分、中には1時間以上動かないものもいた。餌を食べたカマキリは、飼育箱の壁、天井、底面や止まり木などでじっとしている。これが100匹以上。飼育箱の中でしか見ることのできない異様な光景であった。しかし、1匹のカマキリが次々とアブラムシを食べることはなかった。子供のカマキリとは言え、わずか2mmのアブラムシ1匹で腹一杯になるとは思えなかった。これもカマキリの生き残り戦術?こんなことが頭に浮かんだ。獰猛なカマキリも子供の時は外敵の餌食になる。だから身を隠してじっとしている。動き回ると体力が消耗するので、たくさん食べなければならないからである。確かに小食である。そのかわり成長は遅い。アブラムシを2週間与えても、体長は2.0cmくらいであった。××××ちびちゃんたちはコロナの影響で毎日自宅生活なので、しょっちゅうカマキリを見ていた。「おじいちゃん、また餌を食べたよ」「皮を脱いでいるカマキリを見たよ」「カマキリが大きくなったよ」などと私に話し、観察が楽しそうだった。孵化して1か月後には2.5cmになった。成長するにしたがい食べる量も増えたのであろう。ところがこの頃からアブラムシが採れなくなり、死亡するカマキリも多くなってきた。再び小さな虫を採り始めた。いろいろな虫を与えた。するとバッタやイナゴの子供、アブ、ハエ、芋虫などを好んで食べた。しかし、コガネムシ、ハムシ、テントウムシなど表面が丸くて硬いものを襲うことはなかった。餌になる虫は1日おきに採りに出かけた。これが大変なので、途中からクモも与え始めた。5月半ばには4cmになった。ところがこの頃から自然死や共食いで死亡するものが増え、5月下旬にはわずか4匹になってしまった。200匹いたのが2か月後にはわずか4匹。厳しい現実を目にした。しかし、生き残ったカマキリは6cm以上。野外のカマキリよりはるかに大きい。これは餌不足だけではない。飼育箱が狭いのでストレスがたまったのも一因。そんな気がしたので、大きな飼育箱にした。その後は死亡するものは出ていない。××××カマキリの飼育はちびちゃんだけでなく、私も楽しくなってきた。知らないことが次々と出てくるからである。その一つがクモ。クモの巣を張るものはカマキリに襲われると体から糸をだす。これがカマキリに付くと動きが鈍くなるので、別のカマキリの餌食になることがある。これを知ったカマキリは、糸で垂れ下がっているクモを襲うことはなかった。また6月上旬、餌として採った虫の中に4cmのカマキリが3匹いたので、これも飼育箱に入れた。するとその日のうちに、もともと住んでいる6cmのカマキリの餌食になってしまった。2日後、さらに大きい5cmのカマキリを入れると、これも食べられてしまった。このことから、大きなカマキリは小さなカマキリを好んで食べるように思えた。6月中旬、学校が始まった。カマキリは4匹とも元気だ。体も大きくなり9cmを越すものがいる。餌を入れると大きな鎌で虫を捕まえ、かぶりつく。迫力がある。ちびちゃんたちは真剣な眼差しで見ている。ここまで育てたカマキリが死亡すれば、ちびちゃんたちは悲しむだろう。何としても成虫になるまで育てたい。それまであと1か月、せっせと餌虫採りに通うつもりだ。▲愛らしいカマキリの子供MORINOTAYORI 6