ブックタイトル森林のたより 804号 2020年09月

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概要

森林のたより 804号 2020年09月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹サンショウ181秋風を感じる里山で、赤い果皮と黒い種子が印象的なサンショウを見つけました。サンショウ(Zanthoxylum piperitum)は雌雄異株の落葉低木で、枝に褐色の鋭い棘を対生させ、葉は奇数羽状複葉が互生します。複葉の小葉は長さ1~2cmで縁に鋸歯があり、葉表は濃緑色で葉裏は帯白色で、これが5~9対つきます。5月に雄株に咲く花は「花山椒」として出荷され、7月頃までは雌株の未熟な果実を佃煮にし、9月以降には赤褐色に熟したものを薬味に利用されます。サンショウ属にはサンショウの他、イヌザンショウ、フユザンショウ、イワザンショウ、コカラスザンショウ、カラスザンショウ、ヤクシマカラスザンショウなどがあり、特にイヌザンショウはサンショウに似ていますが芳香が少なく、トゲが互生であるため見分けが容易です。中国では同属別種で辛味や麻痺成分が多いカホクザンショウ(Zanthoxylum bungeanum)を「花椒(ほあじゃお)」と呼び、古くから麻婆豆腐などの香辛料として使いました。また韓国に唐辛子が伝来する17世紀以前、高麗王朝が朝鮮半島を統治した時代の漬け物(キムチの原形)にはサンショウが重要な薬味として、ニンニクやミカンの皮と一緒に用いられていました。中国、明代の本草学者、李時珍果実は漢方で「蜀椒、花椒」と称し健胃や鎮痛、駆虫に用い、日本薬局方に収載されている苦味チンキや正月に飲むお屠蘇の材料としても有名です。主な辛味成分はサンショオールとサンショアミド、他にゲラニオールなどの芳香精油、シトラールなどで体を温める効能があります。アイヌ民族はサンショウを「サイソ」と呼び、内皮を煎じて痔に塗布し、果実や果皮の煎汁を健胃や整腸に飲用し、果皮の煎汁をかぶれやあかぎれ、水虫に塗布し、生の葉をもんで虫刺されに用いたのです。▲サンショウの果実と葉(りじちん、1518~1593年)は、サンショウを分類しており、「蜀椒(しょくしょう)は肉厚で皮には皺があり、その種子は黒光りしていて、まるで人の瞳のようであるので、椒目(しょうもく)という。ほかの山椒の実も黒光りしているが、やはりこれには及ばない。もしも土椒(いぬさんしょう)ならば、種子には光沢がない。」と記しています。サンショウは古くから辛いものを表す「椒」の字をあて、「山の辛味」という意味で「山椒」と書きます。学名の小種名piperitumは「コショウのような」という意味で、英名もJapanese pepperと表記されます。サンショウの葉は料理のツマとして、また魚を煮る時には臭味消しとして利用されますが、果皮は粉末にして薬味や七味唐辛子の材料とされ、果実もぬか床などに利用されました。MORINOTAYORI 4