ブックタイトル森林のたより 805号 2020年10月

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概要

森林のたより 805号 2020年10月

活かす知恵とを森林人93●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー教授●柳沢直森林と心の癒しれません。このあたりの要素については、いくらか科学的な検証もされています。しかし個々の要素の検証よりも複合的な効果そのものに意義を見いだすべきなのかもしれません。都市環境で暮らす多くの日本人にとって、森林は身近な自然環境ではなくなってしまいました。しかし一方で、身近でないからこそ普段の生活を忘れられる環境であるとも言えます。そんな森林は心のモヤモヤをリセットするにはもってこいなステージなのではないでしょうか。その理屈では、普段から森林で仕事をしている私は森の中では逆に仕事のことを考えてストレスが溜まってしまいそうですが、不思議とそうはなりません。やっぱり森は癒しの空間なのかもしれませんね。この原稿を執筆中の2020年8月は、新型コロナウイルスの感染拡大第2波が到来していると騒がれている最中ですが、それに先立つ自粛期間中に家を出られずストレスを溜めた人が多いと聞きます。ストレスの原因には大きく二つあると思います。一つ目は、人との交流です。何気ない他人との会話が我々の心の健康にも大きな意味を持っているのだと気づかされた方も多いのではないでしょうか。二つ目は、環境の問題です。人と会うかどうかと関係なく、人工的な環境に閉じ込められる閉塞感もストレスの大きな要因と言えるでしょう。家から一歩も出ずに無機的な環境でリモートの仕事をこなし続けていたら、ストレスが溜まるのも道理です。都会のオフィスビルと自宅を往復する生活を送っているようなサラリーマンが仕事上のストレスを抱えた場合、様々な方法でストレスを軽減しようと試みると思います。趣味に興じるのも良いでしょうし、スポーツで汗を流すのもよいかもしれません(ただしお得意様との接待ゴルフはお勧めできませんが)。いずれの場合もストレスの原因となっている仕事上の問題が解決する訳では無いですが、意識を仕事から切り離すことによって一旦リセットし、ストレスが軽減できるのでしょう。一言で言えば仕事を忘れて気分転換ということなのですが、この切り替え、なかなか難しいものです。焦がしてしまった鍋のお焦げのように、仕事の失敗や不安は心の中から簡単には落とせないので、気分転換中にもふとした弾みで思い出してしまうことになりかねません。新型コロナウイルス対策による自粛で自宅に巣ごもり状態になっている場合の問題は、ストレスを軽減しようにも、家庭が仕事場と化しているので、気分転換をする状況が生まれにくいことも一因だと思います。こんなときに、気兼ねなく一人歩きできる自然環境が近くにあったら、状況は大きく変わるに違いありません。想像してみてください。鳥や虫の鳴き声を聞きながら涼しい木陰を散策しているところを。感染防止のため一人で歩いていたとしても、室内で一人孤独にバーチャルな自然の映像を見て過ごす時間とは雲泥の差です。過度のストレスを緩和するための自然環境として様々なものが考えられますが、森林は多くの点で優れていると思います。まず気温や湿度が適度であること。いくら自然とはいえ砂漠のような厳しい空間ではかえってストレスが溜まるでしょう。適度に閉鎖空間であることも重要だと思います。鬱蒼とした森は逆効果かもしれませんが、適正に管理された明るい森は、樹冠から林床までの適度な空間が屋内にいるような安心感を与えてくれます。生き物が多いのも森林の特徴です。一人で歩いていても一人では無いと感じられるのは多くの生き物と出会うからかもしMORINOTAYORI11 MORINOTAYORI