ブックタイトル森林のたより 805号 2020年10月

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概要

森林のたより 805号 2020年10月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹ムキタケ182秋の森の恵み「木の子」。今から40年ほど前、大学生の私が秋田営林局仁別営林署管内にある仁別森林博物館を訪れた時のこと。林業機械の歴史を勉強する目的で訪れた博物館に、「秋田杉」の美林が隣接しているとお聞きし、営林署の方と一緒に歩いていました。私が見事な秋田杉に感動していると、突然営林署の方が「ヌキモタシとナメコだ。こりゃぁいい」と言われ、作業上着を脱いで広げ、なぜかヌキモタシだけを採られました。このヌキモタシとはガマノホタケ科ムキタケ属のムキタケ(Sarcomyxa serotina)で、これが私にとっては初めてのムキタケ採取体験だったのです。また営林署の方は「ナメコよりもムキタケの方がおいしい」と喜んで持ち帰ったのです。ブナやミズナラなどの枯木に発生する多くの木材腐朽菌の中でも、ムキタケはいろんな料理に合うため重宝されます。ムキタケは漢字で「剥茸」と書かれ、信州ではカワムケ、群馬ではカタハ、カワムキ、福島ではノドヤケ、秋田ではヌキモタシの別名で呼ばれ、岐阜県の飛騨地方はムクダイ、ノドヤキとも呼ばれます。その名の如く、傘表面の皮がツルツルと剥くことができ、キノコ似ており、ブナやナラの朽ち木に一緒に生えることも度々です。ムキタケとヒラタケを採り違えても問題はありませんが、ツキヨタケをムキタケと間違えると大変です。ムキタケならば幼菌でも成菌でも傘表面の皮が必ず剥けます。またツキヨタケならば柄を裂くと紫褐色のシミがありますが、まれにシミのないものもあるので注意が必要です。食欲の秋、食い気が先行する私にとっては、身の危険も感じるキノコシーズン到来なのです。▲一本の枯れ木に大発生しているムキタケらしい香りと旨味、優しい口あたりであるため、どんな料理にも合います。特に鍋物やすき焼きにすると、つるりと飲み込んで喉が焼けるため「ノドヤキ」と呼ばれるのです。またアイヌ語でキノコは「カルシ」、ムキタケは「カプケリカルシ」と呼ばれ、干したり塩漬けにしたりして保存食にもされました。ムキタケは木材を白色に腐らせるガマノホタケ科の白色腐朽菌で、傘は初めのうちは半球形や饅頭形ですが後には開いて腎臓形や半円形となります。傘表面の色は淡い黄土色~黄褐色のものが多く、時には緑色や紫色を帯びることもあり、表面には細かい毛を密生させます。太短い柄は傘の横につき、傘の裏側のヒダは密で、色は淡黄色~淡褐色です。ムキタケは食用のヒラタケや、有毒なツキヨタケにMORINOTAYORI 4