ブックタイトル森林のたより 805号 2020年10月

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概要

森林のたより 805号 2020年10月

●詳しい内容を知りたい方はTEL0576ー52ー3111下呂農林事務所まで治山、林道の各研究会では、日頃の業務で直面する課題について、調査・研究を行っています。今年2月に行われた発表会で発表された研究課題を紹介します。林道白尾?鷲見線における法面保護工法の考察下呂農林事務所(前所属郡上農林事務所)林業課神原昭真法面崩壊の原因開設当時、強固な岩盤であったはずの吹付内部の地山が、土壌化し不安定になったことが崩壊の原因と考えられました。岩自体に亀裂が多いこと、また、標高千五百mに迫る、低温、積雪の厳しい地形条件であることから、吹付内部に入り込んだ水分が凍上を繰り返すことで、通常よりも短い期間で岩盤の風化が進み、表層の強度が低下したと考えられます。一方で、簡易法枠吹付工施工箇所で崩壊が見られなかったのは、切土勾配が6分と緩やかなことや、アンカーによる支持力が、地山が土壌化した際の表層崩壊の発生を抑えていることが理由だと考えられます。また、6分勾配で吹付枠が表面に突出している簡易法枠吹付工では、法面に雪が着雪し覆われるため、断熱効果による凍上の抑制も期待できるのではないかと考えられます。開設時の工法選定法面の風化には、地質、水分条件、気温、方角など様々な条件が関係しています。亀裂の多い岩盤や、積雪地での工法選定は、施工時だけでなく、将来的に法面の安定が確保できるかを含めて、特に注意して工法を選定する必要があると感じました。工法選定時において簡易法枠吹付工は、モルタル吹付工などに比べコストがかさむことから除外されてしまうこともあります。しかし林道工事は開通までに数十年を要することもあり、それまでに補修が必要となるケースもあります。開設時にかかる費用だけではなく、その後の補修など維持管理にかかる費用も考慮した工法選定が、最終的により経済的な林道整備を可能にすると考えられます。まとめ・今後の課題白尾~鷲見線では、モルタル、コンクリート吹付による法面保護工は、二十年程度の経過で法面の崩壊が発生していました。当路線のような、岩盤に亀裂が多い箇所、標高の高い箇所での施工においては、耐用年数も短くなることから、その後の補修の可能性も考えた工法検討が重要であると考えられました。今後の課題は、将来的な経済比較をどう行っていくかだと考えます。モルタル吹付工法面の補修は、施工後十年程度で必要になるとされていますが、林道において日頃から変状を把握し、崩壊が発生する前に補修を行うような維持管理を行うことは、難しく、崩壊が確認されてから補修しているのが現状です。このような場合、補修にかかる費用も大きなものとなってしまいます。この路線においても、現時点では簡易法枠吹付工の施工から十年程度しか経過していないため、今後の経過を観察し、初期費用の増加に対する、維持管理のコストを比較することが必要と考えられます。路線の概要林道白尾~鷲見線は、郡上市白鳥町と同市高鷲町を結ぶ全体計画延長約十八kmの森林基幹道です。マグマが地表で急冷されてできた安山岩や火山灰からできた凝灰岩などの軟岩が多くみられ、開設時の法面保護工として、モルタル吹付工やコンクリート吹付工が施工されています。法面保護工施工箇所の現状今回、法面の崩壊が確認された16箇所において現地調査を行ったところ、モルタル及びコンクリート吹付工法面の崩壊が5箇所で確認され、これらの箇所では吹付内部の岩盤が土壌化し、中抜けを起こしていました。施工後の経過年数は、二十年程度でした。一方で、開設時や法面改良により簡易法枠吹付工を施工した5箇所においては、施工後十年程度経過していますが、変状等は見られませんでした。▲法面崩落状況▲簡易法枠吹付工MORINOTAYORI9