ブックタイトル森林のたより 807号 2020年12月

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概要

森林のたより 807号 2020年12月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹アカミノイヌツゲ184岐阜県側の白山信仰の入り口、白鳥町石徹白。その石徹白にある白山中居神社に行くと、手水舎にアカミノイヌツゲが神籬(ひもろぎ)として飾られているではありませんか。神籬とは神社本殿や神棚以外の場所に、神を迎えるための臨時の依り代とするもので、一般的には常緑樹のサカキを祀ります。「ひもろぎ」の「ひ」は神霊を指し、「もろ」が天下ること「あもる」の意味で、「き」は木を意味するとされ、つまり神霊が天下る木、神の依り代となる木なのです。神籬や御玉串料に使われる樹木はさまざまで、岐阜県中南部ではサカキ、飛騨地方ではソヨゴ、郡上市白鳥町の石徹白中居神社や高山市の日和田神社、飛騨市河合町の匠屋敷ではアカミノイヌツゲが使われています。アカミノイヌツゲはクロソヨゴ(Ilex sugerokii)の変種とされ、北海道~本州中部以北、一部岡山県に隔離分布する常緑低木で、山地の尾根や岩場、草地などに見られます。葉は長さ2~3cmの革質で上方に低い鋸歯があり、よく分岐した枝を密につけて樹高約2mになります。雌雄異株で初夏に咲く花の花柄は1~1・5cm、秋に赤く熟す果実は径約7mmになります。岐阜県内の分布を見ると、西濃や東濃の南部ではクロソヨゴが、それ以北にはアカミノイヌツゲが比較してアカミノイヌツゲの花柄が短いことに由来します。和名のクロソヨゴは「幹が黒く、ソヨゴに似た」意味で、アカミノイヌツゲは「果実が赤く、イヌツゲに似た」という意味です。ちなみに名前にあるイヌツゲの「イヌ」は、「ツゲに似ているが違う」という意味です。一年の穢れを祓い新年を迎える「年越しの大祓え」。もしも神社詣でに行くことがあれば、祖先たちが常磐木に託した神籬の存在に気付いて欲しいのです。▲白山中居神社の神籬分布する傾向があり、夜叉ヶ池では標高約1000m、冠山では標高約900mまではクロソヨゴ、それより高い地域でアカミノイヌツゲが生育しています。両種の見分けは分布と大きさです。クロソヨゴは山梨県以西の太平洋側、中国地方、四国などに分布し、樹高も5mほどと大型で、葉の長さ3~4cm、花柄の長さ約2~4cmと、アカミノイヌツゲより大きいのが特徴です。学名のうち属名Ilexは、セイヨウヒイラギ(holly)の古代ラテン名です。種小名sugerokiiは、ロシアの植物学者マキシモウィッチ(Carl J. Maximowicz)が、名古屋の本草学者水谷豊文(通称、水谷助六、1795~1833年)に因んで、「助六」としたものが訛ったものです。また、アカミノイヌツゲの変種名(var. brevipedunculata)は「短い花柄のある」という意味で、これはクロソヨゴにMORINOTAYORI 4