ブックタイトル森林のたより 808号 2021年1月

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概要

森林のたより 808号 2021年1月

森林研究所●臼田寿生●詳しい内容を知りたい方はTEL0575ー33ー2585森林研究所まで森林作業道の適切な維持管理のために?森林作業道災害リスク評価参考図の作成?を防ぐためには、路肩の地割れや排水施設の機能不全などの異常を早期に発見し、対処することが重要です。今回紹介した参考図は、県内全域分を作成し、各農林事務所へ配布済みですので、ぜひご活用ください。※「平成26年度流域山地災害等対策調査(流木災害対策手法検討調査)委託事業報告書」(林野庁)はじめに岐阜県では、森林作業の効率化を図るため、森林作業道の作設を積極的に進めています。平成21年から30年までの10年間だけでも、毎年170km以上の路線が作設されてきました。このように県内では、路網整備の充実化が進められているところですが、近年は大雨が増加傾向であることから、今後は、これらの既設道が重大な損壊に至ることを防ぐための適切な維持管理の重要性が高まると予想されます。そこで、当所では、「森林作業道災害リスク評価参考図」を作成し、提供を開始しましたので、その概要を紹介します。損壊しやすい箇所の抽出森林作業道の維持管理を効率的かつ適切に行うためには、損壊が起こりやすい箇所を絞り込むことが重要です。当所がこれまでに調査した結果では、森林作業道における切土および盛土の損壊は、道を作設した林地の斜面角度が30度以上の急傾斜地で発生しやすいことがわかっています(図1)。このため、以前から当所で整備を進めてきた既設道の線形データや航空レーザ測量から得られた地形データを活用して、道が作設された場所の斜面角度をGIS(地理情報システム)で抽出し、損壊しやすい箇所を可視化しました。下流の保全対象への影響森林作業道が損壊すると、周辺の林地までも巻き込み、これらが土石流化した場合には、下流の保全対象に甚大な被害を及ぼす恐れがあります。全国各地の土石流発生箇所を調査した資料※によると、流木を含んだ土砂は下流2km程度まで到達することが報告されています。このため、万が一、道が崩壊した場合には、下流2km程度まで被害が及ぶ可能性も想定しておく必要があります。そこで、被害を与えた場合に特に人命に影響が及びやすい人家等の建物を保全対象として、GISにより林地から建物までの距離を可視化しました。地図の活用方法実際に作成した地図の一部を図2に示しました。地図上の色分けされた線は既設森林作業道を示しており、道を作設した斜面の角度が急な順に紫色、赤色、橙色で表示しています。また、背景の色は建物までの距離を表しており、建物に近い順に桃色、黄色、水色で着色しています。青丸で囲んだ箇所は、損壊が発生しやすい急傾斜地に道が作設され、建物までの距離も近いため、災害リスクが高いと評価できます。このような災害リスクが高い箇所は、優先的に維持管理を検討することが必要であると考えられます。おわりに土石流の発生につながる重大な損壊図1森林作業道の損壊箇所における林地の斜面角度図2森林作業道災害リスク評価参考図MORINOTAYORI17