ブックタイトル森林のたより 808号 2021年1月

ページ
4/22

このページは 森林のたより 808号 2021年1月 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

森林のたより 808号 2021年1月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹サカキⅠ185新年初めの初詣、私が行く神社では必ずサカキの神籬(ひもろぎ)を目にします。サカキ(Cleyera japonica)はカミサカキ(神榊)とか、カミシバ(神柴)などと呼ぶ地域もあり、他にもサカキの代用とされるヒサカキ(Eurya japonica)と区別するため、マサカキ(真榊)とも呼ばれます。しかし近年販売されているサカキの中には、中国からの輸入品もあり、日用品や食料品だけでなく、神に捧げる神籬まで輸入品に頼っているのが現状です。ただし、飛騨地方や郡上市北部ではソヨゴなどが利用され、高山市や飛騨市、白川村などでは主にソヨゴを、ソヨゴも手に入れ難い高標高地の高山市高根町の一位森神社や飛騨市河合町の匠屋敷神社、郡上市白鳥町の白山中居神社などでは、クロソヨゴやアカミノイヌツゲが利用されます。サカキ(Cleyera japonica)は関東地方以西の温暖な地に生育する常緑中高木で、葉は単葉で互生します。葉身は卵状長楕円形または狭長楕円で、長さ7~10cm、幅は2~5cmです。葉の表面は濃緑色で光沢があり、葉縁は全縁で、葉先は鋭頭をしています。枝葉を神事に使うため「神に捧げる木」を表す「榊」と記されますが、これは日本独特の国字で中国では「楊桐(ようとう:yangtong)」と記されます。古くは、先端が尖った枝先をも中心であった関西地方にサカキが多く生えていたこと。サカキの横枝は枝も葉も水平に出て、全体が三角形に広がっているため、その形が神の依代(よりしろ)に相応しく、玉串として使いやすい形状であること。そして枝先端の芽(冬芽)が細長く、少し鎌状に湾曲し、この芽の形が勾玉(まがたま)に似ていること。他には枝葉を燃やすとパチパチ音を出し、その音が邪気を祓うと考えたから。などと言われます。▲サカキの葉と独特な芽の形つ常緑樹が神の降臨する依代(よりしろ)として特別視され、同じようにオガタマノキやマツなどの常緑樹に「サカキ(榊、賢木、神木)」の名を充てていました。万葉集では巻三の三七九に、「ひさかたの天(あま)の原より生(あ)れ来る神の命(みこと)奥山の賢木(さかき)の枝に…」という大伴坂上郎女の長歌があります。万葉集の研究家でもある賀茂真淵氏は、「賢木(さかき)は栄木(さかき)であり、神社によっては松、杉、樫などを用いた」と言われています。他にもサカキとは、常緑を意味する「繁木(さかき)、栄木(さかえき)」とする説。神の鎮まる地と人間の境界を示す「境木(さかき)」とする説など諸説あります。平安時代以降にサカキを指す言葉になりましたが、その理由として、当時日本文化のMORINOTAYORI 4