ブックタイトル森林のたより 808号 2021年1月

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概要

森林のたより 808号 2021年1月

シリーズ森林文化の4研究実践と岐阜県立森林文化アカデミー課題研究公表会要旨森と木のクリエーター科森林環境教育専攻石川麻衣子「企業の森」活動の計画構築における社会的インパクト・マネジメントの実践と評価築する前に、受益者についての調査と分析を実施する流れとなっている。企業の森の活動における受益者には、「活動参加者」のほか「森」がある。まず活動についての目標と活動計画を決め、その後、出来上がった活動計画を考慮しながら森の目標および整備計画を構築する(図2)。活動の計画構築にあたっては、まず調査フェーズで主催者や企業の森アドバイザーへのインタビューによって活動の全体像を把握した。続く分析フェーズでは、観察によって主催者が受益者の背景や課題を把握する目的で、森林環境教育プログラムのトライアルを実施した。最後の計画フェーズでは、企業・行政の両方の主催者が集まり、ワークショップ形式のディスカッションで目標と計画を構築した。前述の企業の森活動の課題に対し、この手法を用いることで、目標に向け効果的かつ継続的な活動が実現できないかと考え、本研究の目的を、社会的インパクト・マネジメントの計画ステージを企業の森活動の計画構築で実践し、その有効性を検証することとした。2.研究手法2?1.企業の森の活動団体の選定ケーススタディの対象は、岐阜県林政部主催の事業「企業との協働による森林づくり」への参画企業から、活動の継続性や頻度、参加者の意欲などを考慮し、岐阜県内で電子機器等を製造するI社に決定した。2?2.目標・計画構築の実践参照した手法は、社会的インパクト・マネジメントである。この手法が従来の計画構築方法と大きく異なるのは、活動によって何らかの便益を受け取る「受益者」を中心とした視点で検討する点である。そのため計画を構1.研究背景と目的昨今、企業はSDG sやパリ協定の達成に向け環境や社会性に配慮した経営が求められ、持続可能な社会実現へ向けてさまざまな利害関係者への影響を考慮した戦略を掲げている。企業の社会的責任(Corporate SocialResponsibility以下、CSR)とは、企業活動が社会や環境に与える影響に責任を持つ活動のことである。本研究で着目した「企業の森」活動は、森林を用いた代表的なCSRの一つである。企業の森活動は件数が増える一方で、場当たり的な企画に陥りがち、活動の具体的な価値や効果を設定しづらいなどの問題を抱えており、活動の持続性の確保には、企業が担うべき説明責任が果たされるよう、計画立案・実施・評価の仕組みがあることなど、長期的な視点での目標設定や計画構築の重要性が指摘されている(神山,2009)。そこで着目したのが、バックキャスティングで活動のゴールを定め、目標に沿った計画を作成する「社会的インパクト・マネジメント」という手法である。この手法は単なる計画構築にとどまらない。計画に従い活動を実施し、効果を把握し、活動を改善する一連のPDCAサイクル(図1)をまわすことによって持続的な活動が実現される。さらにこの手法を実施することで、事業や活動が環境や社会へ及ぼす影響を定量的・定性的に把握し、価値判断することが可能となる。図1社会的インパクト・マネジメント・サイクル(社会的インパクト・マネジメント・ガイドラインVer.1より出典)図2活動計画および整備計画の手順と実施主体MORINOTAYORI 6