ブックタイトル森林のたより 809号 2021年2月

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概要

森林のたより 809号 2021年2月

活かす知恵とを森林人97●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー准教授●玉木一郎森林文化アカデミーでのスギ・ヒノキ以外の樹種の苗づくりこのところ国産漆に注目が集まっています。ウルシは中国原産のため、国内で栽培されている地域は限られていますが、岐阜県の飛騨地方でも栽培されています。そこからもらった種子をまいたところ、2年目にして漸く発芽してきました。まだ樹高10cm程度ですが、来年の成長が楽しみです。同じウルシ属にハゼノキがあります。ハゼノキは果実から木蝋を採取することができます。ヤマハゼやヤマウルシは県内に広く自生しているのですが、ハゼノキの自生地は限られています。何年か前からハゼノキの実生苗を作っています。今年ポットから畑に移植した個体はとても成長が良く、1年で1m近く伸びました。来年の春には地植えできそうです。いつかこれらの個体から、授業で漆や木蝋を採取できるようにしたいです。これまでに、他にも果実を食べることができるサルナシやオニグルミ、サンショウ、ザクロなどの苗木も植栽してきました。学内で育てているスギ・ヒノキ以外の樹種の苗木は、今はまだ小さいものが多いですが、着実に種類を増やしています。20?30年後に、その時代の学生たちの学びに貢献できるように、今後も生産を続けていくつもりです。私がアカデミーで担当している育苗の授業では、演習林に植栽するためのスギ・ヒノキの苗木を主に育てています。岐阜県郡上市白鳥の林木育種事業地で分けてもらった種子を苗畑に播種し、裸苗やそこからの実生を移植したコンテナ苗を2?3年かけて生産しています。裸苗の育苗作業では、草取りや床替えの作業が大変で、その話も面白いのですが、今回はスギ・ヒノキ以外で育てている樹種についてご紹介します。そもそも、スギ・ヒノキ以外の樹種を育てている主な目的は、学内に植栽して樹木同定実習で使用するためです。現在、樹木同定実習で利用している植栽木の中には、県内の標高の高い場所や北部に行かないと見られない冷温帯性の樹種がいくつかあります。これらは30年ほど前に隣接する森林研究所の研究員により植栽されたり、アカデミー開学時に業者により植栽されたものです。しかし、冷温帯性樹種は種類が多いため、それらを十分にカバーできているとは言えません。さらなる学びの充実のために、学内ではまだ数が少ない/植えられていない樹種を中心に、ヤチダモやハリギリ、キハダ、シナノキ、コハウチワカエデ、チドリノキなどの苗を作っています。ヤチダモやハリギリは家具材としてもよく使われる樹種で、それぞれ、タモやセンの名前で材が流通しています。ハリギリの大きくなった個体を2年前に植栽したところ、今では樹高が1・5mを超えました。キハダは既に演習林に植栽されているのですが、大きくなり過ぎていて特徴的な幹肌を観察するのには良いのですが、葉は全く観察できない状況です。そこで果実を採取して種から苗を作り、学内に植栽しました。まだ樹高1mにも満たない小さな個体ばかりですが、葉の形や着き方を観察するのに役立っています。岐阜県中津川市から長野県の木曽谷にかけての地域では、ヒノキ、サワラ、クロベ、アスナロ、コウヤマキの5種類の針葉樹を木曽五木と呼んでいます。これらの樹木は、江戸時代に森林資源が不足した際に伐採が禁じられ、保護されてきました。このように岐阜県とも馴染み深い樹木なのですが、学内にヒノキやアスナロ、コウヤマキはあったものの、クロベは小さな個体しか無く、サワラはありませんでした。4年ほど前に、サワラの苗を何本か植えたところ、現在では大きな個体が樹高4mを超え、今年から授業写真1学内に植栽したイチイガシ写真2苗畑で育苗中の紅葉が美しいハゼノキで利用できるようになりました。昨年、サワラやクロベから挿し穂を採取し、挿し木苗を作りました。発根した穂はそう多くなく、また苗畑に移植後も、成長の良い個体は少ないのですが、だんだん苗が育ちつつあります。アカデミーのある辺りの植生帯は暖温帯で、極相種はシイ・カシ類になります。岐阜県に自生するカシ類にはアラカシやシラカシ、アカガシ、ツクバネガシ、ウラジロガシ、イチイガシがあります。しかし、学内で見ることができるのは、アラカシとシラカシ、ツクバネガシのみです。そこで、イチイガシとアカガシ、ウラジロガシの苗を作ることにしました。イチイガシに関しては、かつての卒業生が置いていった苗木を育てて移植した個体が樹高2mを超えました。アカガシも樹高1mほどに育っています。MORINOTAYORI1111