ブックタイトル森林のたより 809号 2021年2月

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概要

森林のたより 809号 2021年2月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹サカキⅡ186前回に引き続き、サカキの話をさせていただきます。ずいぶん前、郡上市美並町の古川秀樹さんとお正月に飾るサカキについて話をしていたとき、「わが家の山に大きなサカキがありますよ」と教えていただきました。そこで後日、古川さんの案内で山の中にあるサカキの古木を見に行くと、筆舌し難い巨木を前に、発する言葉が見つかりませんでした。古川家は江戸時代から植林し、山を管理されてきた林業を生業にされ、私が目にしたサカキは目通り周囲が175cm、樹高約9・0mもの大木だったのです。岐阜県で最も大きいサカキは、不破郡垂井町栗原山中腹にある「栗原連理のサカキ(県指定天然記念物)」で、目通り3・4m、推定樹齢400年とされます。このサカキは地上0・4mのところから幹が2本に分かれ、太い方の幹は周囲2・2m、細い方は0・95mで、地上約1mのところから5つの幹に分かれ、幹や枝がいたるところで絡んで合体しています。一説には「ここを訪れた男女が枝をからませておくと、自然に枝がつながるころには縁が結ばれる」とされ、別名「縁結びのサカキ」と呼ばれています。ちなみに「連理」とは、一本の木の枝が他の木の枝につながるものですが、この他にも夫婦や男女の仲がきわめて親密なことの例えカキの枝葉は魔除けになる。病気治療に効く」といった俗信があったそうです。さて、冒頭の古川さんとの話の中で、「サカキの材は強靱、堅硬で農機具や杵、天秤棒、舟の棹(さお)に用いたほか、昔は床柱や桁材などにも利用されたらしいです」とお話ししていると、「実は、うちの家屋の桁にもサカキの大木が使われていたそうです」と、これまた驚愕のお話をお聞きしたのです。サカキの大木を前に、どうかこの大木が後世に残ることを願いつつ現場を後にしたのです。▲古川さんの所有山林で見たサカキ大木にも使われます。中国の唐代では、楊貴妃が玄宗皇帝を愛し、「私たち二人は連理の木になりたい」と言ったと、長恨歌に歌われたことに由来するとも言われています。平安末期の西行法師は「さかき葉に心をかけんゆふ(木綿)しでておもへば神もほとけ成けり」と、日本人の根底にあった神仏習合の考えを詠んでいます。わが家でも、ことある毎に神棚のサカキの枝と紙垂(しで)を取り替えますが、昔は枝の取り替えは月に二度、江戸時代までは旧暦の1日と15日に取り替える習わしがありました。サカキは神籬として神事に用いられるだけでなく、奈良県十津川村では「山にサカキの杖を持って行くとヘビ除けになり、サカキの杖でヘビを触ると色が変わる」と言われ、鹿児島県屋久島では「サMORINOTAYORI 4