ブックタイトル森林のたより 811号 2021年4月

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概要

森林のたより 811号 2021年4月

-すごく腹が立つ、アライグマ-【第357回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohira早いもので、母が亡くなってから1年が経過した。その法要を我が家族7人だけで行った。新型コロナの被害が収まらないからである。父の時は親族がお寺に集まって供養し、その後料亭でお酒を飲みながら父を偲んだので、何か物足りなかった。そこで、母が孫たちと食事をするのが唯一の楽しみといっていたので、夕食は子供たちの好きなものを食べることにした。すると3人とも声をそろえて「回転寿司」。次々と回ってくる寿司を取るのが楽しいからだという。しかし、外食は自粛しているので、パックに入っている寿司にした。テーブルに並んでいる7個のパック。豪華であった。子供たちは、「これはイカだ、エビもあるよ」、「これは何?」と嬉しそうであった。ところがなかなか食べないのである。一人が口に入れると、あとの二人が食べるのである。しかし、また食べない。どうも自分だけ早く食べると、少なくなるかららしい。このやり取り、なんとも微笑ましい。仲のいい兄妹だと心が和んでくる。ところが一転、言い争いが始まったのである。原因は寿司に付いていた景品の取り合い。妹二人が好きなものを取ったので、兄のY君が「じゃんけんでなければ駄目だ」と怒り始める。しかし、「嫌だ」と逃げ回る二人。そのうちに母親が「あんたはお兄ちゃんだから我慢して」。この一声でY君、妹に向かって「すごく腹が立つ」と大きな声で怒っていた。この兄妹けんか。思わず笑えてきた。しかし、しばらくすると怒りが収まったのか、普通の兄妹に戻っていた。この時、腹が立ってもすぐに収まるのと、そうでないものがあることを再認識した。それは、私には「すごく腹が立つ」ではなくそれ以上の「超すごく腹が立つ」ことがあったからである。それは大事に育てていた金魚がアライグマに襲われ、大きな被害を受けたからである。××××私は10数年前から金魚に卵を産ませて、それを育てている。金魚の子供が大きくなるのが楽しみであった。それが6年前にアライグマに襲われ、半数以上の金魚が餌食となってしまった。容器に蓋をしてなかったからである。そこで、木枠の上に金網を張りその上に分厚い板を載せた。ところがこれも押し開けられて被害にあってしまった。そこで、さらに木枠▲餌食となった金魚の上にブロックを載せた。これ以後、被害を受けていない。生き残った金魚は大きくなり、昨年6月卵を産み始めた。この日は30卵ほどあった。明日からたくさん卵を産むだろうと楽しみであった。ところが翌日無残な姿となっていた。アライグマがあの重いブロックを押しのけて蓋をあけ、金魚を襲ったのである。それも大きな金魚のいる3個の水槽。金魚は全滅。1匹も残っていなかった。あるのは食べ残しの金魚の死骸だけ。無残な光景であった。××××3回も無残な光景を目にしたら、気力が萎え、この水槽で飼うのは止めようかと思った。しかし、これではアライグマにやられっぱなしなので、止めるわけにはいかない。どうしよう。こんな日々が続いた。ところがアライグマのことはどうでもよくなった。岐阜県で記録の少ないゾウムシをたくさん採ったからである。その虫はオリーブアナアキゾウムシ。場所は岐阜市内の畑に植えられたオリーブの木。時期は夏から秋。このゾウムシはオリーブ栽培地では大害虫である。しかし、オリーブの無い岐阜県では山地のイボタノキやネズミモチで数匹採れているだけの珍しい虫である。それが、何故岐阜市内で発生したのか。遠くから飛んできたとは思えない。オリーブは所有者が13年前に苗木を植えたとのこと。もともとこの木にいたものではない。となるとオリーブ以外の木で発生しているのではないか。そんな気がしたのでオリーブと同じ仲間のキンモクセイを与えてみた。すると樹皮や葉を食べるのである。ひょっとしたらオリーブ以外の木で繁殖しているのではと思い、飼育を始めた。××××するとよく食べるのである。しかも寒くなっても暖かい日は樹皮を齧るのである。このまま冬を越すのではないかと楽しみになってきた。ところが年が明けた1月になると、動きが鈍くなり、すべて死亡してしまった。このような結果になることは覚悟していたが、残念であった。すると忘れていたアライグマに襲われたあの光景が再び目に浮かび、またまた腹が立ってきた。このままでは負け犬だ。自分が情けない。もう一度この水槽で金魚を飼おう。気力がわいてきた。その時は金網を張った木枠の上に大きなブロックを2個載せて頑丈にするつもりだ。しかし、観賞用に飼っている金魚があまり見えない。「アライグマの野郎!」とまたまた腹が立ってきた。MORINOTAYORI 12