ブックタイトル森林のたより 812号 2021年5月

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概要

森林のたより 812号 2021年5月

活かす知恵とを森林人100●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー講師●渡辺圭未利用材をどう使うか国産広葉樹利用の可能性など、他にはないものとなり、このような材でも付加価値をつけたものとして充分使っていくことができると感じました。好みが分かれるところもあるかと思いますが、私としては満足のいくものができました。現在コロナ禍ということもあり、広葉樹の原木を海外に買い付けに行くことができない状態だと聞きました。このような状況下ではなくても、いろいろな社会情勢に左右される輸入材に比べ、地域経済にも利益をもたらすことのできる国産材、地域材の需要はこれからどんどん高まっていくと思われます。ただし、北米やヨーロッパ産のような大径で通直な材は国内にはほとんど残っていないため、小径木やこれまで山側も価値を見いだせなかったような材をどう活かして使っていくかということは大きな課題になっていきます。家具や木工品のつくり手は、これまでのように作ったものを売っていくということに加え、森林資源や木材流通の現状を知り、木製品を通じて消費者に伝えていくという役割を担っていく必要があると思います。なぜなら一番消費者に近く、手に取れる作品を実際に作り出すことができる説得力のある立場だからです。産地がわかり、伐採や流通業者の顔の見える材を使っていくことも大きなアピールポイントとなるのではないでしょうか。私自身もまずは抽斗の前板として使うことから始めましたが、これからも様々な個性のある国産広葉樹材のもっと魅力的な活用方法を考え、形にしていきたいと思っています。昨年材料購入で伺った高山市の株式会社カネモクさんで、変わった材を見かけました。樹皮が変異して複雑に入り組んでいるミズナラ(写真1)です。カネモクの森本社長が何に使えるかはわからないけど珍しいので使ってみてくださいと何枚か分けてくださいました。幅も狭く用途としては限定されます。真っ先に思いついたのは抽斗の前板。言ってみればありがちな用途なので、もっと面白く予想もつかないような使い方はないかと考えていました。私は今年度、教員としてアカデミーに来る前までは福岡県の北九州で家具工房を営んでいました。これまで私が作ってきた家具に使う材は、主にロシアや東欧から輸入した大径のナラ材で、節や割れなどの欠点がないものを選ひ゛、木目もなるべく通直なものを使ってきました。理由の一つは永く使っていくときに反りや割れなどの不具合がでてしまうリスクが低いということ。また、オーダーメイドの場合これまでの家具の写真や現物をお客様にお見せして出来上がりのイメージをしてもらうのですが、均一な材を使うことでそのイメージから大きく外れることのないものを作ることができるという面もあり、私自身もスッキリとした表情の家具が好みということもありました。前置きが長くなりましたが、つまりは前述のミズナラの材のような個性的なものは、予想もつかないような使い方を考える前に、抽斗の前板として使ったこともなかったのです。そんな折、タイミングよく木工専攻で小抽斗製作を年間のカリキュラムに入れようという話があがり、そのための試作を作ることになりました。まずはあの板をいろいろと考えるよりも前板として使ってみようと思い、サンプルを製作しました(写真2)。本体部分はトネリコ、取手は黒檀です。特に樹皮が複雑な部分を選ひ゛、一部貫通している部分もあります(写真3)。均一で通直な材で製作する場合、節や曲がりなどがあると小さなものでも欠点として認識して避けようとしてしまいますが、個性的な材の場合はどうやってそれを活かそうかと考えます。材をどこにどう使うかを選ぶ際にも手間がかかり、加工にもそれなりの注意を払う必要がありますが、木目や模様写真1写真2写真3MORINOTAYORIMORINOTAYORI 1212