ブックタイトル森林のたより 812号 2021年5月

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概要

森林のたより 812号 2021年5月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹シャガ189国道41号線を飛騨川沿いに北上する途中、車を止めた待避所の山すそにシャガの花を見つけました。シャガ(Iris japonica)は本州や四国、九州に分布するアヤメ属の多年草です。山林などの少し湿った場所で大群落をつくり、4~6月に花を咲かせます。花は朝咲いて夕方にはしぼむ一日花で、毎日次々咲き替わるため、一期一会を大切にする茶花として、また和を感じさせる庭園の花として好まれます。シャガの和名は、シャガと同じように葉を扇形につけ、射干(しゃっかん)と呼ばれていたヒオウギ(Iris domestica)と誤って、「射干」または「著莪」と記されたためとされます。葉は表面も裏面も同じように見えますが、実はすべてが裏面とされます。これは一枚の葉の表面同士が、内側に折られてくっついた状態であるため、外側はどちらも裏面というのです。こうした葉は植物学上、単面葉(unifacial leaf)と呼ばれ、野菜のネギは円筒形となった単面葉なのです。野外で見るシャガの葉は、一方に傾いて倒れており、傾きの上側が「生態上の表側」となり、クチクラ層が発達して光沢があります。また基本的に生態上の表側と裏側は他にも違いがあり、表側には気孔がほとんど無いのに、裏側は気孔が発達するように、シャガの葉も傾いた表側には気孔は発達しておらず、裏側の気孔が発達してい装)材として用いたとする考えもあるそうですが、これはヒガンバナの葉がクッション材として使用されていたことによる推測です。また台湾にはタイワンシャガという別種がありますが、沖縄にシャガ類が生息していないことから、シャガは南西諸島沿いに北上したのではなく、中国南部から直接、あるいは韓国経由で日本に渡って来た可能性があります。ちなみにシャガの学名を見ると、種小名にjaponica(日本の)とありますが、多くの文献には「中国からの渡来」と記されています。▲1日しか咲かないシャガの花ます。花は橙色と青紫色に彩られた外花被片(萼)があり、中央の黄色い部分がニワトリのトサカ状の突起になっています。先端が2つにくびれた内花被片(花冠)は、1本の雌しべが3裂して糸状になっています。シャガは雌しべがありますが3倍体であるため結実しがたく、増殖は根茎からの匍枝によります。一般に3倍体植物は葉や花が大きくなる反面、タネがうまくできません。ヤブカンゾウやヒガンバナも3倍体ですが、中国にはこれらの2倍体があるそうです。ヤブカンゾウは現在も中国や日本で食用とされ、ヒガンバナは飢饉の救荒植物として移入されたと想像できますが、シャガは何の目的で持ち込まれたのでしょう。シャガは梱包(包MORINOTAYORI 6