ブックタイトル森林のたより 815号 2021年8月

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森林のたより 815号 2021年8月

活かす知恵とを森林人103●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー教授●津田格ちょっと気をつけたいきのこ、テングタケの仲間に肝臓や腎臓などの細胞が破壊されて死に至ります。初期症状が出るまでに時間がかかるため処置が手遅れになる場合が多く、極めて危険なきのこです。古くから知られる猛毒きのこですが、平成の時代にも誤食による悲しい死亡事故が絶えていません。毒成分は環状ペプチドという複雑な化学構造を持つアマトキシン類、ファロトキシン類と呼ばれるものです。色と毒の間には直接の関係はないと思いますが、真っ白のテングタケ類は要注意です。代表的なテングタケ科のきのこを紹介しましたが、この仲間には他にも様々な種が存在します。有毒種が多いので正確な同定が必要ですが、以前紹介したタマゴタケ(写真3)など優秀な食用きのこも存在します。コロナ禍の中、人ごみを避け、野山を散策する人も多いと思います。足元に気をつけて歩いていると多くのきのこに出会うことでしょう。有毒のきのこであっても、その多くは食べない限りは危険ではありません(カエンタケなどの例外はあります)。きのこは一期一会。必要以上に怖がらず、せっかくの機会ですのでじっくりと観察してみてください。※毒きのこについて書かれている書籍は多々ありますが、以下のw ebサイトなどでも情報を得ることができます。一度ご覧になってください。・厚生労働省自然毒のリスクプロファイルhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.htmlまだまだ暑い日が続きそうですが、ツクツクボウシも鳴き始め、秋の足音が近づいています。以前(2018年7月)のこの欄で、初夏に発生するきのこについてお伝えしましたが、暑さが落ち着いてくると、それらのきのこが再び顔を出し始めます。今回は夏の前後(初夏、初秋)に見られるきのこの代表グループであり有毒のものも多いテングタケ類(テングタケ科のきのこ)を少し紹介します。テングタケ類はほぼ全てが樹木と共生している菌根菌です。多くは広葉樹のブナ科やカバノキ科、針葉樹のマツ科などの樹木と共生しており、それらの根と菌糸が繋がってできた「菌根」を通して栄養のやり取りをしています。コナラやアベマキ、アカマツが多い里山林や、シイやカシ類が多い神社やお寺の裏山でこの仲間に出会うことが多いでしょう。テングタケ類は比較的見分けやすい特徴を持っています(図1)。丸い傘(平らに開くものが多いですが、丸い山型や真ん中が凹むものもあります)、まっすぐ伸びる柄、そしてその柄の根元には膨らみ(つぼ)があります。また大半の種類はさらに柄の途中に刀の鍔のような膜(つば)を備えています。「つば」を持たない種類もありますが、「つぼ」と「つば」の両方を備えている場合はこの仲間とみなしてほぼ間違いありません。「つば」の有無、それぞれの器官の形や色などが名前を調べる際の決め手になってきます。有毒種が多いため、きのこに興味を持っている人は特徴をおさえておくと良いでしょう。以下に代表種をいくつか紹介します。●テングタケ(写真1)コナラなどの里山林で見かけることのあるテングタケ類の代表種です。傘が茶色で白いいぼがあるのが特徴です。アカマツが混じった林ではイボテングタケという近縁の大型種も発生します。またシラカンバ林に発生する近縁種で傘が赤いベニテングタケは毒きのこのモチーフとなっているため、知っている方も多いと思います。これらはいずれも有毒ですが、致死的ではありません。毒の主成分のひとつはイボテン酸というアミノ酸の一種で強い旨味を持っています。調味料としての利用も研究されたそうですが、如何せん毒成分そのものなので実用化は無理だったようです。またこのイボテン酸とその分解産物のムッシモールという成分はハエを殺す作用を持っており、かつては台所などにこれらのきのこを置いてハエを捕殺していました。この用途からテングタケを「はえとり」、ベニテングタケを「赤はえとり」と呼ぶ地域もあります。●ドクツルタケ、シロタマゴテングタケ(写真2)猛毒きのことして有名なこれら2種はいずれも色は真っ白で、つばとつぼがある典型的なテングタケ類の形態をしています。誤食した場合、すぐに病院で適切な処置をしてもらわない限り、まず助かりません。食べて6~7時間すると腹痛や下痢、嘔吐などの症状が現れ、その後1~3日間の間写真1テングタケ図1写真2シロタマゴテングタケ写真3タマゴタケMORINOTAYORI11