ブックタイトル森林のたより 815号 2021年8月

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概要

森林のたより 815号 2021年8月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹スイバ192「その葉で10円玉を擦ると、ピカピカになるよ」スイバを前に子どもたちに10円玉擦りに挑戦してもらいました。スイバ(Rumex acetosa)はタデ科ギシギシ属の多年生草本で、北海道から九州各地の道端など酸性化した土壌に多く生えています。葉は長楕円形で根葉は長い柄があり、高さ約80cmになる茎には縦の稜線があり、紅紫色を帯びます。茎につく下部の茎葉には短い葉柄があり、上部の葉は茎を抱くようについています。初夏には茎の先が分岐して花軸を出し、穂状に淡緑色または緑紫色の小花を密生させます。雌雄異株で雄株は黄緑色の雄花を、雌株は赤色の雌花を咲かせますが、その性比は雄株が約3割、雌株が約7割とされます。秋に落ちた種子は芽生えると葉を放射状に広げて越冬するため、生育期間は11月頃~翌年の9月頃までです。スイバは「酸い葉」が和名の由来で、スカンポ、スカナ、スッカッチョなどの別名でも呼ばれます。属名のRumexは古いラテン語で「槍(やり)」を意味し、スイバの葉が矢尻の形をしていることに由来し、種小名acetosaは「酸っぱい」を意味します。ちなみに中国では漢字で「酸模、蓚」と記されます。スイバの酸味は野菜などのアク(えぐ味)の成分の一つのシュたりしてアク抜きすれば食べても害はなく、スイバも和え物やお浸し、一夜漬けに利用されました。ヒメスイバの仲間は英語でSorrel(ソーレル)、フランス語でOseilles(オゼイユ)と呼ばれ、フランス料理などでは肉料理のつけ合わせやサラダ、スープ、肉料理のソースに用いられます。酸化した10円玉はスイバの水溶性シュウ酸でピカピカになったのです。▲スイバの根は黄色で細かく枝分かれしていますウ酸で、多量に摂食すると消化器粘膜を刺激して炎症を起こし、体内でカルシウムと不溶性の化合物となってカルシウムの吸収を妨げます。また体内で生成されるシュウ酸カルシウムは、結石として腎臓や尿管等に障害を発生させることもあります。ウシなどの偶蹄目はシュウ酸を第一胃内の細菌(Oxalobacterformigenes)で分解するため、日常的にシュウ酸を含む植物を少しずつ摂取すると、第一胃内でのシュウ酸分解能が高まってシュウ酸吸収量は少なくなる特性があります。シュウ酸の命名の由来にもなった漢字の「蓚」はスイバを意味し、タデ科(イタドリなど)やカタバミ科、アカザ科(アカザ、ホウレンソウなど)は水溶性シュウ酸塩(シュウ酸水素ナトリウムなど)で、サトイモ科(サトイモ、ザゼンソウ、マムシグサなど)は不溶性シュウ酸塩(シュウ酸カルシウムなど)です。水溶性シュウ酸は水にさらしMORINOTAYORI 6