ブックタイトル森林のたより 821号 2022年2月

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概要

森林のたより 821号 2022年2月

-1日のウンコの量、東山動物園のゾウ-【第367回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohira前号でお話ししたキリギリス。11月中旬過ぎても元気いい。それが後半になると動きが鈍くなる。「あと、何日音色が聞けるだろう」と思う日々。ところが12月になるとなぜか回復。元気になったのである。これならクリスマスまで生きる。美しい音色を聞きながら皆でケーキが食べられる。そんな光景を浮かべていたら、「これだ!これがこの原稿のネタだ」と体が熱くなった。しかも、キリギリスはいつ天国へ旅立つかもしれない。そうなればキリギリスを供養する原稿にもなる。急に心が楽になってきた。それが、「駄目だ」と再び心が重くなる。原稿の締め切りが25日。間に合わないからだ。若いころは1週間で完成したが、今は頭の老化で無理。それに、文章へのこだわり。これだけはボケていない。理解してもらえるか。息の詰まるような文章ではないか。などなど自分自身で納得できたら投稿しているからである。別のネタを探さねば。さらに気が重くなった。翌日、娘が声をかけてきた。「明後日、東山動物園へ行くけど、一緒に行かない」。私は「これだ、助け船が来た」と体が再び熱くなる。孫たちがどんな目で動物を見るか。どう感じるか。これがネタになる。しかも、1日間だけの行動を書くだけだ。十分間に合う。この日の晩酌はいつもよりおいしかった。××××12月12日、8時半に動物園の駐車場へ。ほぼ満車。コロナの規制が緩んだせいか家族連れが多い。9時、開園。孫たちは園内へ駆け込んだ。ここまでは今までと同じだ。しかし、今回は違った。小学6年のY君が園内マップを見ながら歩くコースを考えたのだ。親たちは地図を手にしたY君についていくだけ。Y君は妹たちに「次は何が見たい」と聞きながらそこへ向かう。驚いたのは今までだったらライオン、ゾウ、カバ、サイ、キリンなどの大型動物が人気者。それが、今回は他の動物に目が向き、それを興味深そうに見ている。どの動物にもわかりやすく説明した看板があった。その説明を小学2年のNちゃんも見ていた。字が読めるようになったからだ。その説明を読んで孫たちがいろいろなことを聞いてきた。「おじいちゃん、分布って何なの」とか原産地、害獣、共生、共食いなどいろいろだ。話していると「こんなことを感じているのか」。孫たちも成長したものだと嬉しくなった。しかし、こうした楽しい時期もいずれ無くなるだろう。と思ったら急にさびしくなった。××××このほか、鳥、ヘビ、ワニ、魚など450種以上いた。すごい数だ。これをすべて見た。しかし、時間がなく、見ただけというのがたくさんいた。そこで孫たちに「どの動物が思い出に残った」と尋ねた。「ゴリラ。高いところから家族を守っているから」と小学4年のIちゃん。次いでNちゃんが「可愛いコアラ」だと答えた。私は二人の性格から何となくわかるような気がした。ところがY君。「なんだろう」と考えていたが「ゾウの糞」と答えた。ゾウは1日に1トン食べて、同じ量をうんことして出すとして、その模型が展示してあった。その量があまりにも多かったからである。軽トラ1車分くらいの餌。その横にはソフトボールよりはるかに大きい丸い糞。これが何個(おそらく数百個)も積み重ねてあった。ゾウ1頭が1日にこれだけ食べて、これだけ糞を出す。Y君だけでなく私自身も驚いた。また、動物の住居には野外広場とその横に建物(宿舎)があり、そこを自由に出入りしていた。ある動物を見ている時Iちゃんが「何であの建物があるの。入ってしまうと見ることができないよ」と不満そうに言った。「あれはね、狭い部屋ばかりにいると、運動不足になって体を悪くするからだよ。だから外に出て気分転換のため動き回っているのだよ」と答えた。するとIちゃん「だったら家のキリギリスは、狭い虫かごの中ばかりにいるので可哀そうだね」と言った。この言葉。まさかIちゃんからでてくるとは思いもしなかった。しかし、私には気になる言葉であった。あっという間に閉園。本当に楽しい1日だった。××××午後、7時帰宅。まず孫たちは虫かごへ。「生きているよ」と大きな声。皆が虫かごを見て一安心。これだけ長く一緒にいると家族の一員だ。特に娘。12月からは娘が餌やりや虫かごの掃除をしているので、よけい可愛いのだろう。その後寒さが厳しくなり、ほとんど動かなくなった。しかし、手を出すと逃げるのでまだ元気だ。これならクリスマスまで大丈夫だ。そんな気がしてきた。ある日娘は「キリギリスが死んだら、飾っておきたいのでガラス蓋の箱に入れてちょうだい。これはお願いではなく命令だから」と言った。娘のキリギリスに対する思いやり。胸に響いた。娘が動物園へ誘ってくれたお陰で、その後のキリギリスの様子まで書くことができた。とうとうクリスマスイブの日が来た。キリギリスは元気だ。これなら明日は家族でキリギリスを見ながらケーキが食べれるだろう。この様子を書きたいが、原稿締め切り日の明日は休日。すぐに送らなければ。MORINOTAYORI 6