ブックタイトル森林のたより 822号 2022年3月

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概要

森林のたより 822号 2022年3月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹フキノトウⅠ199春の山菜としても有名なフキノトウ。葉のように見える淡緑色の苞(ほう)が花茎と花序を包み、その苞には白い綿毛が密生しています。成長して苞が開くと総苞片に包まれた頭花が現れ、小花が多く集まった散房状の花序が見られます。1ヶ所にフキノトウが群生している場所では、そのすべてが地下茎でつながった雄株ばかりとか、雌株ばかりということがしばしばあります。フキは草本では珍しく、雄株と雌株に分かれる植物で、雄株の花は黄色と白色が混じって全体的に黄緑色に見え、雌株の花は白く見えるので遠くからでも雌雄判別が容易にできます。さて、ここからの話が少しややこしくなります。まず黄色い花の雄株の頭花を観察してみましょう。頭花の小花には5裂した花冠と花粉が入った葯、先が膨れたこん棒状の雌しべ(花柱)があります。つまり雄株の小花は雄しべと雌しべが備わった両性花です。しかし実際には、結実できないので機能的には雄花となります。雌しべが小花の中心から伸びる時、小花の奥にある葯から花粉を受け取って伸長するため、柱頭の多くに花粉をつけています。これは雌しべが花粉をつけて頭花の表花になってしまうと、花粉媒介者である昆虫を呼び寄せることができません。そこで花粉はつくれないけど蜜を分泌することができる雄花に似た小花(中性花)が役に立つのです。受粉した雌の小花は初夏に、タンポポのような綿毛のある痩果(そうか)となって、どこかへ飛んで行くのです。面に出てくることで、昆虫類など花粉媒介者(ポリネーター)が花粉を運びやすくしているのです。また花粉の色は株によって、黄色や白色と変化があるようです。次に、白色の花の雌株の頭花を観察すると、2種類の小花が確認できます。1つは貧弱な花冠と先端が2裂した細い糸状の雌しべを持った白い雌の小花で、こちらは無数に見られます。もう1つは雄花に似た形態の小花で、1頭花に数個しかありません。この小花は花粉もつくらず、胚珠も退化した中性花で、花粉も果実も実らないので不稔花とも呼ばれます。雌株にある雌の小花と雄花に似た小花(中性花)は、各々が交配と花粉媒介者を誘き寄せる役割とを担っています。雌の小花は糸状で細いため多数密集させるのに有利ですが、花粉もつくらず、蜜も分泌しません。もしも雌株の花がすべて雌の小▲左側が雌株、右側が雄株MORINOTAYORI 6