ブックタイトル森林のたより　822号　2022年3月

概要

森林のたより　822号　2022年3月

プログラム紹介！！岐阜県立森林文化アカデミー内にある森林総合教育センター（愛称morinos）で実施しているプログラムについてご紹介します！今回は、１２月に開催した「新しい林業を考える」をテーマに、ゲストと一緒に森を歩いたり、トークしたりするプログラムです。ゲストは、長野県松本市の株式会社柳沢林業（以下、柳沢林業）の代表取締役を務める原薫さんです。柳沢林業は「信州・松本平の豊かな風景をつくる」をモットーに、従来の林業の枠に囚われない、様々な取り組みをされており、２０２１年度グッドデザイン賞（分類：地域の取り組み・活動）も受賞されています。参加者は県内外から集まった２０～５０代までの１０名。直接林業に携わっている人もいれば、自営業者、学生、公務員等と、まさに里山のような多様なメンバーでした。まずは、全員で自己紹介。どこから来たか、何をしているか、今日はどんなことを期待しているのか、など質問をしてみると、共通しているのは、森の新たな活用法を模索して「もがいている」ということ。悩みを共有することで、徐々に打ち解けた雰囲気になりました。原さん原さんと森歩き原さんからは、柳沢林業の取り組みや自身の経歴を簡単に紹介いただきました。環境問題に興味があり、農学部に進学した原さん。ただ、環境問題は大きすぎ、何をどうすればいいのか分からなかった中で１冊の本「木を読む―最後の江戸木挽き職人」（林以一著）を読み、日本の木の文化、人と自然の関係性＝人も自然の一部、ということを知って衝撃を受けたそうです。卒業後、静岡市井川地区（大井川の源流部）の森林組合に就職した原さん。井川で暮らす中で気づいたのは「山って豊かなんだな」ということ。その後、縁あって柳沢林業に就職します。現在社長を務めている原さん自身、林業をしているというよりは「山と人を活かす仕事をしている」と思っているとのこと。自己紹介の後、アカデミーの演習林へのんびり森歩き、途中、森のようちえんの子どもたちとすれ違い、「こうした空間利用もありですね」と話しながら先へ進みます。演習林内の自力建設建物「四寸傘」や山の神で立ち止まり、原さんは語ります。「今は植え過ぎてしまって森林整備のために木を伐りますが、本来であれば、使うことが目的でどの木を伐ろうか、というのが正しいのでは。かつて日本では伐り過ぎてはげ山になった時代もあるし、今は逆に伐らなさ過ぎて荒れてしまっている。これからはどのように森林を活かすのかが、人間に試されているのでは。」「森林は遷移を経て極相林（平衡状態）に向かいます。人間にとっての災害も、自然にとっては極相に向かうプロセスの一部に過ぎないのです。最初からこうなったら良いというベストを目指すのではなく、『中今（なかいま）』という言葉があるのですが、今に集中すること。今が幸せなら未来も幸せになると思います。」笑顔で語る原さんの話を聴いているうちに、参加者の表情もほころびます。森を歩き、谷間を流れる冷たい風を感じたり、林床に赤く実ったフユイチゴに舌鼓を打ちながら、参加者同士、リラックスした雰囲気でおしゃべりを楽しみながら戻ります。林業現場で日々試行錯誤をしながらも、社員と共に「新・林業」の創出に取り組む原さん。プロセスを大事にし、変化にしなやかに対応する姿は、森の木々のように感じられました。参加者からは、「原さんのお言葉で「山があれば豊かである、生きていくことができる」というのが心に残りました。（４０代）」、「山に関わる人や林業従事者がもっと増えれば山（森）も世の中も良くなると確信しました。不安とか色々あっても頑張って乗り越えることが大事だとも。自分もミニマムに同じようなことを考え、やろうとしているので頑張ります。（２０代）」、「これからの里山整備の運営の仕方についてヒントを頂けて、次の1歩を踏み出せるきっかけになりそうです。気づけたことが沢山あり、とても有難い機会でした。（４０代）」などの意見がありました。こうしたプログラムは、morinosのHPで開催をお知らせしています。新型コロナウイルス感染防止対策の状況により実施しない場合もあります。興味を持ってくださった方は、morinosのホームページ、YouTube動画をご覧ください。ホームページhttps://morinos.net開所時間１０：００～１６：００YouTube検索「morinosチャンネル」定休日毎週火・水曜日morinosHPYouTube「morinosチャンネル」9 MORINOTAYORI