ブックタイトル森林のたより 823号 2022年4月

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概要

森林のたより 823号 2022年4月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹フキノトウⅡ200今から25年ほど前、山で採ってきたフキノトウを洗っていると、娘に「フキノトウのトウって何?」と聞かれました。漢字で「蕗の薹」と書きますが、では「薹」とは何か。「薹」はフキやアブラナ科植物の花茎や花軸を指しています。多くの野菜類は食用の適期、つまり旬を過ぎると「薹が立つ」と表現されます。広辞苑で「薹が立つ」を調べると、「年頃が過ぎる、盛りが過ぎる、時期が過ぎる」の意味だと記されています。フキノトウは春に花を咲かせ、受粉後に花茎を伸ばして初夏には80cm程度にまでなり、タンポポの綿毛種子に似た種子を飛ばします。この状態がフキノトウの「薹が立った」最終段階です。フキやフキノトウはテルペンやフキノン、フキノール酸など、独特の香りがありますが、フキノトウにはビタミン類やカリウムも多いことでも有名です。ただし注意してほしいのは、フキにもフキノトウにもピロリジジンアルカロイド(Pyrrolizidine alkaloids)という肝臓に有害な成分があることです。もちろん、少量しか食べないとか、アク抜きして食べるには何の問題もありません。この成分はフキノトウ以外にも、コンフリーやジジンアルカロイドを摂取し、捕食者から身を守る防御物質や性フェロモンの前駆物質として利用していることです。フキノトウと言えば、秋田県にはフキノトウを原料とする「ばっけ焼酎」というアルコール飲料があり、そればかりかフキノトウは秋田県の「県の花」でもあるのです。さて、当時小学生であった娘は、「薹が立つのはまだ先か」と思っていたのが懐かしい今日この頃なのです。ツワブキ、モミジガサ、フキタンポポにも含まれ、ハーブ茶として利用されている南米原産のマテ茶にも含有されています。フキで注意して欲しいのは地下茎です。フキの地下茎は地中で横方向に伸びますが、何らかの理由で地表に露出すると、緑色に変色して光合成をし始めます。時に、これをワサビと間違えて採取して誤食し、ピロリジジンアルカロイド中毒した事例があるのです。多くの人は香りが違うので気づくはずですが、ワサビと思い込んだ人には見分けがつかないようです。このピロリジジンアルカロイドという成分は、マダラチョウ類の雄にとっては大切な成分です。特に有名なのはアサギマダラの雄で、雄の蝶はヤマヒヨドリやヒヨドリバナ、フジバカマ等から、ピロリ▲薹が立ったフキノトウMORINOTAYORI7