ブックタイトル森林のたより 827号 2022年8月

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概要

森林のたより 827号 2022年8月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹ゴマギ204「なにこれ、ゴマの匂い」、中学生と一緒に林業活動する中で、ゴマギの葉を嗅いでもらった時の会話です。この日は事前に所有者さんから葉の採取許可を受け、中学生自らが森で葉を採取して形や色合い、匂いの違いを比較してもらっていました。ゴマギ(Viburnum sieboldii)は、レンプクソウ科ガマズミ属の落葉木で、本州では関東以西の太平洋側、四国、九州の標高50~1300mの落葉広葉樹林内に点在します。この分布は偏りがあり、関東地方南部の生息分布を見ると箱根山系には多く生息していますが丹沢山系には見られません。岐阜県内でも飛騨地方ではごく普通に見られますが、他の地域ではあまり見かけません。湿気の多い場所を好んで生育する傾向があり、関東地方の河川下流域では氾濫湿原に成立する「ゴマギ-ハンノキ群集」という河畔林もあります。また千葉県市川市堀の内貝塚には、樹高7m、幹周118cmのゴマギの大木が生育しているそうです。葉は長さ6~9cmの倒卵状長楕円形で、先端部には明確な鋸歯があります。一見するとヤブデマリに似ていますが、基部近くには鋸歯はありません。対生する葉の上面は暗緑色で無毛、下面は淡緑色で脈上に毛があり、葉脈がはっきりとくぼんでいます。若い枝は緑色ですが、徐々に褐ラ(Eruca vesicaria)は、胡麻のような香りとクレソンのような辛味が特徴です。ちなみにルッコラ(Rucola)とはイタリア名で、日本語名はキバナスズシロなのです。さて林業活動を終えて、中学生と一緒に夕食を食べていると、偶然にも料理にルッコラが添えられているではありませんか。すると生徒の一人が「これはゴマギだなぁ」と言ってみんなを笑わせ、何とも楽しい夕食となったのです。色~灰黒色となります。4~6月には枝先に径7~9mmの白い花を50~150個咲かせた大きさ6~14cmの円錐花序を付けます。秋には径8~10mmの楕円形の果実を赤~黒熟させます。和名の由来は、枝や葉を傷つけると「ゴマ(胡麻)」のような香りがすることですが、秋になると不思議と香りがなくなります。また人によってはゴマではなく、「ネギの香り」とも表現します。本来、胡麻の香りは、煎ることによって深みを増す「焙煎香気成分」とされ、代表的な成分はこうばしい香りを有するピラジン類や甘い香りをともなうフラン類などがあり、これらが複合してあの香りとなるのです。ゴマギと同じように香る樹木に、奄美大島や沖縄に分布するガマズミ属のゴモジュがあり、これも葉に触れるだけで胡麻に似た香りがします。また地中海沿岸原産のハーブでサラダなどを彩るルッコ▲8月には赤い果実をつけるゴマギMORINOTAYORI 6