ブックタイトル森林のたより 829号 2022年10月

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森林のたより 829号 2022年10月

活かす知恵とを森林人117●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで社会に必要な新しい《学びの場》とは?岐阜県立森林文化アカデミー准教授●小林謙一私は14年前、40歳のときに森林文化アカデミーに入学しました。まったく違った分野からのキャリアチェンジで、不安を抱えてはいましたが、思い切って「学生」となることで「仕事をしながら、次の人生を考えなければならない」というジレンマからは解放されました。これにより自身の価値観にイノベーション(革新)が起こり、これから生きていくための「軸」を見つけることができたように思います。OECD(経済協力開発機構)の幸福度調査で毎年トップ3に入るデンマークでは、社会の変化に対応した失業者向けの手厚い教育プログラムがあり、最大3年以上の「リカレント(学び直し)」ができるしくみがあるそうです。経済的な支援があるということは安心して次のステップにすすむことができる、じつにうらやましいしくみだと感じます。このデンマークで、多くのイノベータを輩出するビジネススクール「KAOSPILOT(カオスパイロット)」を受講した方にお話を伺ってみると、プロジェクト型学習(PBL)を軸とし、クリエイティブな発想を生むため、学生のキャリアや国籍など《学びの場の多様性》も重要視していたといいます。●新しい学びの場の実現に向けて森林文化アカデミー(開学20年)では、18歳から60代まで、多世代、多様な人びとが共に学び合っています。《新しい学びの場》のかたちを、先駆けて実践しているのではないでしょうか。アカデミーでは今、次の20年を見据え、若手教員が中心となって熱い議論がなされています。「教える・教わる」から「多様な人びとが共に学び合う」――持続可能な社会を「森林文化」から実現する共創の場は、さらなる進化が求められていきそうです。グローバル化やテクノロジーの進化が急速に進む現代社会は《将来の変化を予測することが困難な時代》であるといわれています。ニューヨークタイムズ紙に掲載された「子どもたちの65%は、今はまだない仕事に就くかもしれない」(2011年8月)という記事は日本でも話題になりました。現代の小中学生がなりたい職業上位にあがる「ユーチューバー」も、今から15年前には無かった職業です。高度情報化が進んだ昨今では、「学び方」も変化しています。教科書に載っている情報は「Google」ですぐに検索でき、「デジタルネイティブ」と呼ばれる現代っ子の一部は、試験対策も「Youtube」でするのだそうです。目まぐるしく変化し、予測することが困難であるため、自ら課題を発見・解決していくといった、正解がない問いに立ち向かうことができる「21世紀型スキル」も必要とされています。こうしたスキルを身につけていくためには、従来の《教科書から学ぶ》だけでなく、自分で考え・やってみる「プロジェクト型学習(PBL)」が有効だといわれています。●高校での新しい学び全国の高校では、今年度から「総合的な探究の時間」が本格的にスタートしました。「《厳しい挑戦の時代》のために《複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにする》」という言葉から学習指導要領は始まっています。自分の興味関心(Will)を、社会の課題(Need)につなぎ、できること・チャレンジしてみたいこと(Can)を、自身の課題(マイプロジェクト)として実践していきます。生徒が主体的に学ぶため、グループディスカッションやグループワークなどを通して考え・学習する「アクティブラーニング」を中心としており、生徒が学校の外に出て、多くの人と共にプロジェクトを進めることも推奨されています。「マイプロジェクト」の全国大会も開催されており、昨年度の「全国高校生マイプロジェクトアワード」には約1万7千人もの高校生が参加しました。SDGsなどの社会課題や、新しい仕事づくりや創業など、若者たちが《自分ごと》として取り組み、よりよい自分と社会の再構築に挑戦していく…そんな近未来を想像するとワクワクしますね。●社会人にも必要な「学び直し」このように若者は変わっていきます。大人はどうでしょうか?これまでの「学校を卒業し、就職し、定年まで働いて悠々自適な生活をおくる」という「3ステージのモデル」はほぼ崩壊しました。変化する社会に加え「人生100年時代」に対応していくため、国は新たに、さまざまなステージを並行、移行しながら生涯現役であり続けるというモデル=《マルチステージ》の人生を提唱しています。そのような時代には、若者たちと同様に誰もが《「学び直し」ができるしくみ》が必要となってくると思います。自分ごとで課題に取り組む「マイプロジェクト」(※)<図表注釈>※「探究Guide Book2021」(全国高校生マイプロジェクト事務局)を参考に筆者作成Can+自分(たち)が解決したいこと・もっとこうなったらいいなと思うこと社会や地域の課題・他の誰かにとって必要になること自分ができること・やってみたいこと興味・関心必要性・課題WillNeed探究テーマ自分ごとで取り組む「探究」「探究Guide Book 2021」よりMORINOTAYORI 12