ブックタイトル森林のたより 831号 2022年12月

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森林のたより 831号 2022年12月

活かす知恵とを森林人119●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで身近な材をつかうということ岐阜県立森林文化アカデミー講師●渡辺圭校だからといってしまえばそれまでなのですが、自分自身もアカデミーでいろいろと体験してみると、北九州で感じていたほど森と日常はかけ離れているわけではなく、必ずしも大掛かりで高額な設備がなくても、身近な材を使うことは工夫次第でどの地域でも実現できることだと感じました。2022年11月に美濃加茂市のリバーポートパークで冒頭で紹介したスギ材を使ったスツールづくりWSを実施します。(記事の掲載時には終了しています。)美濃加茂市蜂屋町で森林整備をしている大洞里山整備隊が整備の中で間伐したスギを今回のWSでは使用します。流通している材とは違い、とても個性的な印象の板ですが、九州の材とはまた違う表情を見せてくれそうです(写真4)。アカデミーでは日常的に行われていることとはいえ、岐阜県内でもやはりまだまだ地域の材をそのままその場所で使うということは特別なことです。たくさんの地域でこういったことが日常になるように、情報発信をしていきたいと思っています。2018年、森林文化アカデミーの教員になる前に福岡県北九州市でスギ材のスツールづくりワークショップ(以下WS)を実施しました(写真1、2)。これは息子の通う保育園で野外活動の際に使うためにデザインしたものですが、教育的観点からも、できれば地元で伐られた材を使いたいと思っていたものの、当時はホームセンターで売られている屋根の下地などに使われるスギの野地板を使用していました。どこで伐られた材なのか店員さんに聞いたところ、おそらく宮崎産だと思いますとのこと。大量に仕入れているので、どこで伐られ、どういうルートでここにあるのかはわからないとのことでした。当時の私は家具工房を北九州市で営んでいましたが、北九州市は古くから八幡製鉄所をはじめとする鉄鋼関連の企業が多い鉄の街なので、林業が盛んな場所ではありません。地元の材を手に入れようと思っても手段がありませんでした。それでも少し郊外に行けば森もあり、緑豊かな公園も多くあります。身近なところにある木を使う事ができないもどかしさを感じながら、スツールづくりWSでは別の地域の材を使い、普段の家具製作でも遠い海外から運ばれてきた材で家具を製作していました。もちろん家具用材として質の高い海外産の木材は最適で、出来上がるものも不具合が少なく、美しい仕上がりになります。すべての材を地元産のものでというのではなく、使い分けていけばいいと今でも思っています。ですがさまざまな要因で木材の価格が上がり、輸送のための燃料費も高騰しています。少しずつでも身近な材を使っていくことは、森林の荒廃や、雇用問題、環境問題などを解決する手段の一つになり得ます。2年半前にアカデミーに赴任して驚いたことの一つは、身近な材を使うということがとても普通に行われていたことです。アカデミーには隣接する演習林がありますが、そこで伐採されたスギやヒノキを建築や木工で日常的に使います。ときには近隣の市町村の公園で伐採された広葉樹も製材し(写真3)、簡易的に乾燥したあと木製品に変えていきます。もちろんそのための学写真1写真2写真3写真41313 MORINOTAYORI