ブックタイトル森林のたより 831号 2022年12月

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概要

森林のたより 831号 2022年12月

国有林の現場から74日本の文化を守るヘリコプター集材後半)には木曽ヒノキ資源の枯渇に危機感を持った尾張藩により「巣す山やま」「留とめ山やま」として禁伐の措置がとられてきました。明治に入り、この地は御ごりょうりん料林(皇室所有の森林)として扱われてきたほか、明治の終わりには神宮備び林りん(現在は「木曽ヒノキ備林」と呼ばれています)に設定され、御造営用材(式年遷宮用の材)の森林として守られてきました。二つ目には、急きゅうしゅん峻で非常に険しい場所に生育しているため、木材の搬出が非常に困難であったことから今日まで守られてきました(2021年9月号・10月号の国有林の現場から(「木曽式伐木運材図会」の世界)で木曽の山々から苦労して木材を搬出する様が紹介されています)。そのような貴重な木材ですが、近年特に良質の大径材が入手困難な状況下にあります。伝統建築物などの維持修繕等に用いる良質材のニーズ中津川市を中心とした東濃地方は「裏うら木き曽そ」とも呼ばれ、古くから木曽ヒノキをはじめとする良材の産地で、東濃森林管理署(旧付知営林署)所蔵の文献によれば、昭和24年度以降でも、法隆寺再建、東本願寺の修繕、出雲大社復興用材、明治神宮社殿造営、浅草本願寺本堂天井修繕、皇居宮殿造営用、錦帯橋補修、宇治橋作替等々(年度順)、日本を代表する神社仏閣等に用いられてきました。特に20年に一度行われる伊勢神宮の式しきねんせんぐう年遷宮や姫路城の大天守修築用に使われてきたことは、度々テレビ番組にも取り上げられてきたところです。このような良材の産地ですが、それらが今日まで伐り尽くされることなく残されてきたことには、大きく2つのことが考えられます。一つ目には、木曽を含めたこの地は古くから幕府の蔵くら入いり地ち(直ちょっかつりょう轄領)とされてきた後、江戸期(1600年代特に早い時は2~3分間隔で木材が次々と土場まで運び込まれてくるため、先さきやま山(伐倒した木があるところ)の荷掛手は次の木材まで急いで向かい、荷卸手は次の木材が運び込まれる前に木材を集積場所まで移動させるなど、息つく暇もないほどの状況となります。こうした作業に従事する方々の努力により、今日も日本の文化が守り育てられています。(東濃森林管理署)に応える必要があるため、東濃森林管理署では、自然環境や後こうけいじゅ継樹(伐採跡地付近に残った樹木で次の森林になるもの)の育成等に配慮しながらヘリコプターによる集材(木材を山から卸し、集める作業)を行っています。ヘリコプターによる集材は、伐採した木材をその場でつり上げられるため、林内を荒らさないこと、広範囲に点在する材を集材できること、集材スピードが速いなどのメリットがありますが、逆に、コストがかかること、ヘリポート・荷下ろし土ど場ば(山から出てきた木材を一時的に貯めておく場所)の広い場所の確保が必要になること、荷にかけしゅ掛手(ヘリコプターへ木材を吊す人)・荷におろししゅ卸手(木材を卸し安全な場所へ移動させる人)に多くの人員が必要になることなどのデメリットもあります。▲集材に向けて飛び立つヘリコプター▲木材を吊り下げたヘリコプター▲木材を土場へ下ろす様子MORINOTAYORI 18