ブックタイトル森林のたより 832号 2023年1月

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概要

森林のたより 832号 2023年1月

普及コーナーシイタケ原木をめぐる事情■岐阜県立森林文化アカデミー林業普及指導員古川明里す。コナラなどは、伐採すると残った株から萌芽して成長し(「ひこばえ」とも言います)、30年ほどでシイタケ原木に適した大きさへ成長します。飛騨地域では、これまで原木生産が続いてきたことから、コナラが優先的に成長する「シイタケ原木林」が多くあります。シイタケ原木は、コナラ等が葉の中の栄養を幹に移す紅葉以降の秋季から冬季に伐採して生産します。農閑期にあたることから、飛騨地域の農林家の冬仕事として、継続して行われてきたと思われます。しかし、このほかの地域では、原木シイタケ生産者の減少とともにかつての「シイタケ原木林」が放置され、大径な高齢コナラ林となったり、多種類の植物が生えた里山林となったりしています。利用されていない里山林はたくさんありますが、前述の条件が整えば、シイタケ原木を生産することができます。実際に山際から眺めると、モサモサとして手間がかかりそうですが、自伐する方によると、チェンソーと小型運搬車でコツコツと伐採・搬出を行い、シら購入する原木の多くが福島県産でした。事故以降、福島県産のきのこ原木や菌床用おが粉等は使用・流通が無くなり、全国的に需給バランスの乱れが生じました。さらに燃料高や伐採技術者の高齢化、異常気象などにより、十分な原木が入手できないと生産者が頭を抱える事態が続いています。3資源はあるけど…令和元年度から加茂郡白川町で、シイタケ生産者と町、アカデミーが協力して、地元山林での原木調達の試みを始めましたが、令和3年度は伐採可能な森林が見つけられず、ノウハウなどを十分得る前に一旦中断となりました。原木に使用するコナラは、ドングリが成る樹として知られています。「あれ?里山を歩いていると、よくドングリが落ちているし、原木になる木は簡単に見つかるんじゃない?」と思われる方がいるかもしれません。シイタケ原木を生産するには、山林から効率的に運び出せること、森林所有者から承諾が得られること、まとまった量が生産できること、などの条件があり、更に十分な事前調査等が必要です。(自己所有山林であれば、条件が減ります。)そして、調査・交渉・伐採のためには、何か月かの期間が必要です。購入原木の県内の産地は飛騨地域で1シイタケの原木栽培きのこの中でも、皆さんにもっともなじみの深いものはシイタケかと思います。日本では、17世紀にシイタケの人工栽培が始まったと言われています。ナラやクヌギの原木にナタで傷をつけ、その後は自然任せにシイタケが生えるのを待つ方法だったようです。昭和初期にはシイタケ菌が内部にいきわたった原木のかけらを新しい原木に埋め込む方法が全国に広がり、現在の原木シイタケ栽培の元となりました。山林の多い岐阜県でも以前から原木シイタケ栽培が行われてきました。2原木が手に入らない…岐阜県では、シイタケ用原木にはコナラが多く使用されています。原木の調達は、生産者自身が森林で伐採する場合(以降「自伐」と言います)と、業者から購入する場合があります。多くの原木は県内産ですが、植菌に必要な量の確保が難しい場合などは県外産を購入することになります。平成23年に東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生するまで、県外か原木から生えたシイタケおいしそうですね伐採後に残った株から萌芽したコナラ(高山市内)MORINOTAYORI 14