ブックタイトル森林のたより 832号 2023年1月

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概要

森林のたより 832号 2023年1月

-傘寿記念学年同窓会、アサギマダラ-【第378回】自然学総合研究所野平照雄●Teruo Nohira昨年(2022年)の4月に1通のはがきが届いた。高校の同窓会案内であった。そこには太字で、傘寿記念・学年同窓会のご案内と書いてあり、その後に♪そそり立ちたる乗鞍の山たぎち流るる宮川の水山と水とを後に前に控えて抱きてわれ等は集う♪と校歌が記してあった。なつかしくなり、思わず口ずさんでしまった。学生帽をかぶり、制服を着て通った校舎。先生、友たちの顔が次々と目に浮かんできた。この同窓会は今までに何回も開かれている。若いころは10年に1回。それが、年を重ねるごとに間隔が短くなり、最近は3年であった。平均寿命に近づいたからである。それが、今回はコロナの影響で6年も開かれていない。「ようやく皆と会える」と嬉しくなった。その日が来た。場所は高山市の「ひだホテルプラザ」で午後5時開催。30分前に着いたら、多くの友が来ていた。「久しぶり、元気か」、「お陰様で。お前はどうだ」などの会話があちこちから聞こえてきた。皆元気そうであった。受付で出席者名簿が渡された。出席者は221名中48名で、前回よりかなり少なかった。驚いたのは物故者が64名もいたこと。3割近くが天国へ旅立っていたのである。心が痛んだ。これが傘寿か。天国にいる在りし日の友の顔が次々と目に浮かんできた。××××いよいよ同窓会の開始だ。幹事が挨拶をした。物故者が増えているので、健康には気を付けましょう。そして、この同窓会は今回で最後とします。もう会うことはないでしょうから、昔話に花をさかせてくださいとの言葉。そして乾杯。最初は同じテーブルの人と飲んでいたが、そのうちに別のテーブルへ。そして次のテーブルへと移動し飲んで語り合った。出てくる話題で多いのは病気のこと。「お前医者通いをしているのか」。「もちろん、医者通いの日々だよ」。こんな会話が多かった。「やっぱりそうか」と思った。私自身、内科、耳鼻科、眼科などの医者のはしごをしているからである。多いのは高血圧、糖尿病であった。私と同じだ。歳をとるとこの病気が多いのかと再認識した。女性にも聞いたところ、ほとんどが健康だという。確かに顔つやがよく、声にはりがあり、よく動くなど元気がいい。これが80近いおばあちゃんなのか。それで女性の方が長生きするのだと思った。また、男性の中には医者とは無縁と言う者も数人いた。酒は強いし、よく食べる。しかし、物忘れ病は年々進んでいると笑っていた。××××車椅子で参加した友が二人いた。ともに病気で歩けなくなったからである。一人は医者から余命6か月と言われたこと、もう一人は心臓の機能が悪化したからである。二人とも次の同窓会に参加できないだろう。それで出席したのだという。すごい。私だったら間違いなく欠席だろう。この気力には驚いてしまう。女性とも話をした。しかし、親しい人には旧姓で呼んだり、時には「○○ちゃん」などと声をかけてしまうこともある。これが同窓会。本当によい会だと思う。また、ある女性から「あなたの虫友達だったNさんはいつ亡くなったの」と聞かれた。「16年前だよ」。「もうそんなになるの」。彼女はN氏との思い出話をしてくれた。そういえば私にもN氏との忘れることのできない思い出がある。高校2年の時城山公園で見たアサギマダラだ。公園内の草地を飛び回っていたのである。その数数10匹、いや数100匹かもしれない。とにかく多かった。その光景は60年たっても、忘れることができない。N氏ともう一度見てみたいと思ってしまう。今回の同窓会で大きく変わったのが男性の頭。白髪、はげ、ごま塩頭などいろいろだ。60年間でこんなに頭が変わってしまった。まさに傘寿記念同窓会だと思ってしまう。××××あっという間に時間が過ぎ、閉会式だ。幹事の挨拶が終わると、突然某氏が「この同窓会をこれからも続けよう」と大きな声。皆が拍手。「それでは次の幹事を決めてください」と現幹事。しかし、誰も手をあげない。すると誰かが「言い出しっぺの某氏だ」と大きな声。一斉に拍手。これで決まり。同窓会が続くことになった。「2年後にまた会おう」と言って会場をでた。次は二次会だ。参加者は男10名、女11名と今回も女性が多い。今回もカラオケ喫茶。好きな曲を歌いまくった。曲は男性が演歌。それも40年以上前のものが多い。これに対し女性、いずれも今の歌。テレビでよく見る、踊りながら歌っている若者の歌だ。こんな曲を80近いおばあちゃんが歌っている。思わず笑えてきた。ある女性がデュエットで歌おうと声をかけてくれた。私は森繁久彌の「知床旅情」を選んだ。かつてよく歌ったからである。しかし、歌っている途中で「あなたは駄目」と首にされた。しかし、よい思い出になった。二次会を含め楽しい同窓会であった。5日後、新聞を見て驚いた。おくやみ欄に同窓会で会ったばかりのK氏の名前が載っていたからである。数日前に「お互い長生きしようぜ」と言葉を交わしたばかりだったので信じられなかった。5 MORINOTAYORI