ブックタイトル森林のたより 833号 2023年2月

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概要

森林のたより 833号 2023年2月

活かす知恵とを森林人121●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで森のペタゴー?森を舞台に未来をつくる、新たな職種の提案?岐阜県立森林文化アカデミー教授●萩原・ナバ・裕作するのには理由があります。人口も資源も少ないため、国民ひとりひとりの能力が高くないと国家運営ができません。そこで国家戦略として個を尊重した教育に移行することで、個々の能力や幸せを最大限に高めていったそうです。それだけではありません。デンマークは、国連の幸福度ランキングで世界2位、個性を尊重し幸せを追求することが、国の維持につながることを証明したのです。一方、日本の幸福度ランキングは世界54位と残念な結果です。しかし国土の7割を占める「眠れる資源=森林空間」に最後の望みがあると私は考えています。森の空間が人間の個性を活かし、成長させるのに理想的な空間であることは明らかで、教育やウェルビーイングの分野からも注目されています。世界に誇る日本の豊かな森を活かす知恵と、ペタゴーのような仕組みがあれば、デンマークのような理想的な人づくり、社会づくりができるはずです。そこで提案したいのが、森の可能性を最大限活用することで、子どもたちの個性や、生きる力を伸ばすことのできる「森のペタゴー」という職種です。森のペタゴーが、保育・教育現場や学童、プレーパークに常駐し、地域の森を舞台に日々子どもたちの成長を応援すれば、日本人の「生きる力」や幸福度は格段に上がるはずです。今後労働人口が激減していく日本、長年続いた比較競争、評価教育や偏差値教育から脱却しないと、国民の能力はますます低下し、世界から取り残されてしまうでしょう。令和5年、子ども家庭庁が新設され、森林環境税も本格的に始まります。生きる力のある幸せな国民づくりを、森を舞台に始めていきたいと思っています。2014年、ドイツ・ロッテンブルク大学との連携協定締結以来、森林文化アカデミーは、シンポジウム、交換留学、共同研究など数々の事業を積極的に展開してきました。そして2020年7月にはドイツの森林教育施設を参考にした日本初の森林総合教育センター「morinos(モリノス)」も誕生しました。また、昨年9月に実施した訪独視察プログラムでは、森のようちえんやプレーパーク(冒険遊び場)発祥の地であるデンマークも訪れ、ドイツの教育のルーツに触れました。その際、日本にはない「ペタゴー」と呼ばれる職業に出会ったのです。今や世界中に広がったプレーパークですが、その起源は、第二次大戦後にコペンハーゲン近郊に実験的に作られた「建築遊び場(廃材遊び場)」にあります。現在も、放課後の子どもたちの自由な遊びを保証する空間として維持され建築遊びも健在でした。「自分の空間を試行錯誤しながら作り上げる遊びは、将来、自分たちの理想的な社会を自分たちの手で築いていく時の力になる」とデンマークの人は考えています。日本ではとかく軽視されがちな子どもの「遊び」ですが、デンマークでは社会づくりの基盤として重視しています。別のプレーパークでは、子どもたちが建てた無数のウサギ小屋がありました。週3日以上来る子どもたちにはウサギを飼う権利が与えられ、希望する人は仲間を探し、ウサギ小屋を自分たちで建て、放課後の世話当番を調整し合い、責任を持って飼育します。この体験を通して、命の教育、自己肯定感、コミュニケーション力、問題解決力、行動力、社会参画意識など、人が幸せに生きていく上で重要な力が養われるのだと言います。これらプレーパークには、ペタゴーと呼ばれる人間教育のプロが配置され、自由な遊びを通して、将来子どもたちが自分たちの社会を築き、幸せに暮らしていくために必要な「生きる力」や「自由と責任の感覚」を獲得していくことを応援していました。ペタゴーはプレーパークだけでなく、小学校でも働いています。先生は教科を教えることに専念し、ペタゴーは先生とは違う視点で子どもたちを観察し、個性に合わせた学び方や、自己表現の仕方、他を認め合うコミュニケーションを促しています。いわば、子どもたちの学びを支える土台である人格形成を応援しているのです。ペタゴーは時折、日本の「生活支援員」と翻訳されていることもありますが、求められる資質や役割は日本のそれとは大きく異なります。ペタゴーは、大学や専門機関での3年半の実践的な教育のもとに養成されています(国家資格)。学びの領域は、自然科学、野外技術、教育学、心理学、社会学、表現、コミュニケーション、リーダーシップ、ファシリテーション、アート&クラフト、カウンセリング、プレイワーク、DIY技術、社会の仕組みと動かし方など、驚くほど多岐に渡り、高い技術が求められます。子どもの成長全体を見守るプロになるわけですから当然です。デンマークが、これほどまで子ども時代の遊びや人格形成に力を入れ、個を大切に遊び場が社会をつくる1313 MORINOTAYORI