ブックタイトル森林のたより 834号 2023年3月

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概要

森林のたより 834号 2023年3月

木曽三川の治山治水を想う活かす知恵とを森林人122●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで岐阜県立森林文化アカデミー教授●池戸秀隆●詳しい内容を知りたい方はTEL(0575)35ー2525県立森林文化アカデミーまで●川を治めるには、先ず山から明治二十九年の大洪水で八千戸の家屋と四万人の人命を救った人物として大垣市出身の金森吉次郎(かなもりきちじろう)がいます。彼は、暴れ天竜と呼ばれた静岡県の天竜川流域を植林による治水対策で成功した金原明善(きんぱらめいぜん)と明治二十四年に出会い、感銘を受け、揖斐川上流の根尾谷の植林事業に尽力し成果を上げています。このように荒れた谷には堰堤を設置し安定させ、はげた山には植林し土砂流出を防止する工事は時代を経ても治山治水の基本と言えます。●鹿児島県とは姉妹県こうした先人の功労で人命と財産が守られた歴史や政策を学ぶため、毎年の校外授業で砂防遊学館、海津市歴史市民俗資料館、国営木曽三川公園を訪れています。また、公園の近くには宝暦治水の平田靱負を祭神とする治水神社があり、姉妹県となっている鹿児島県を想い参拝すると感慨深いものがあります。●木曽三川と養老山地濃尾平野を流れる木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)は、平野の南西部へと向かい伊勢湾へ流れ込んでいます。これは、プレート運動の圧縮力により濃尾平野の東端にあたる三河高原(猿投山地)を押し上げ、西端の養老山地の下に位置する養老-伊勢湾断層で沈降するため、西に向かって下り坂になるためで、今でも年間平均0・5mmほどの速度で沈降していると言われています。このため古くから、この地域は洪水の被害に襲われ、輪中や水屋の建設をはじめ様々な治山治水対策工事が行われてきました。●江戸時代の宝暦治水関ケ原の合戦で勝利した徳川家康は尾張国を洪水から守るため「御囲堤(おかこいつつみ)」を築堤しましたが、対岸となる美濃国側は三尺(約1m)低い堤防としなければならなかったので、洪水による被害は避けられませんでした。幕府は、宝暦三年に「御手伝い普請」と呼ばれる方法で、遠国の薩摩藩に工事一切を負担するという河川改修を命じています。総奉行を家老の平田靱負(ひらたゆきえ)とし、九四七名が現地に派遣されました。途中、工事費用を工面するため、大阪商人に借金までして支度し、大榑川洗堰(あらいぜき)の築造、木曽川と揖斐川を分流する「喰い違い堰」の築堤、松による堰の補強工事を一年二カ月の期間で四十万両(約二百億円)という巨費を投じ、八十四名の犠牲を払って竣工していただきました。しかし、大洪水では十分な効果が得られなかったようです。●明治時代の木曽川下流改修明治六年、内務省はオランダからヨハネス・デ・レーケを技術顧問として招き、明治二十年から改修工事をはじめ、二十四年間の歳月をかけて三川改修を行っています。主な工事では、山からの土砂流入を抑止する石積堰堤の設置、川の曲がりを少なくするための開削、さらに、海に突き出した堤防である導流堤(どうりゅうてい)を築き、掃流力を高め土砂を海へと押し流し、河川の閉塞を防止するなど合理的な工事で水害による被害を著しく減らす成果を上げています。揖斐川の向こうが養老山地羽根谷の巨石堰堤(海津市)日向松に囲まれた治水神社MORINOTAYORI 10