ブックタイトル森林のたより 834号 2023年3月

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概要

森林のたより 834号 2023年3月

文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹木炭Ⅱ211「川尻さん、家の床下に入れる調湿炭ってご存じですか?」、新築されるお宅の床下に黒炭を入れるか、白炭にするかで悩まれているとのこと。あいにく私には、どちらの炭が良いのか分からないので、まずは黒炭と白炭それぞれの特性についてお話ししました。黒炭は軟らかく、着火し易く、温度も急速に上昇し、発熱量も白炭に勝るため、キャンプのバーベキューには使いやすい反面、燃焼温度が一度ピークに達した後はすぐに低下する傾向があります。これに対して、白炭は硬く、着火しづらく、燃焼温度がやや低い反面、着火後は安定した温度を長時間保ち、途中で新しい炭を補充しても温度が下がりにくく、焼きムラもできづらい傾向があります。焼き物に炭火を用いる最大の利点は遠赤外線効果です。この遠赤外線には水分がほとんど含まれないため、素材のおいしさを閉じ込めたまま香ばしく焼き上げることができます。これに対しガスコンロの炎には水分が含まれているため、素材のおいしさを水分が包み込んで蒸発させてしまいます。黒炭の製炭技術を最も発展させた1つに、茶道の「炭点前(炭手前)」があります。おもてなしを大切にする茶道では、おいしいお茶を入れるための湯加減調整上、火加減調節しやすく、かつ美しい上質な木炭が必要となります。茶道では樹皮が薄い柳肌で、断面が円形で亀裂が菊花状に美しく入ったクヌギ炭が最良とされたため、製炭技術に一層磨きがかかったとされます。さて、木炭の利用事例として珍しいものに、岩手県平泉の中尊寺に眠る藤原四代のミイラがあります。藤原氏の墓棺の内外は木炭が詰められ、高温多湿に耐えるよう防腐・防湿目的で木炭が使われていました。同じミイラでも古代エジプトのミイラでは、木炭を使用した事例はなく、炭焼きの副産物である木タールが防腐剤として利用されていたそうです。炭は焼成温度(製炭する際の温度)が高温になるに従って、酸性からアルカリ性に移行し、かつ電気抵抗が無くなり、通電性の良い組成に変化する特性があります。このため黒炭は酸性で絶縁性が高く、白炭はアルカリ性で通電性に優れる傾向があります。また黒炭はアンモニアなどアルカリ性物質等を吸着し、白炭は酸性物質を吸着させる作用があります。床下の木炭を考えると、湿気を木炭が吸着することでシロアリの発生を防止できることは明らかです。さてあなたなら、黒炭と白炭、どちらを床下に入れられますか。▲上質な黒炭MORINOTAYORI 4