ブックタイトル森林のたより 839号 2023年8月
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森林のたより 839号 2023年8月
文:樹木医・日本森林インストラクター協会理事川尻秀樹オミナエシ216立秋も過ぎた夏の日、飛騨市に向かう車窓から農家の庭先に咲くミソハギとオミナエシをみつけました。ミソハギと言えば「盆花」として有名ですが、岩手県岩手郡ではキキョウ、仙台ではオミナエシやキキョウ、ワレモコウ、神奈川県相模原市(旧津久井郡)ではナデシコ類、岐阜県加茂郡ではヤマユリやオミナエシ、愛知県丹羽郡ではミソハギやホオズキ、奈良県吉野郡ではオミナエシが「盆花」とされます。オミナエシ(Patriniascabiosifolia)は「秋の七草」の一つで、黄色の粟粒が集合したような集散花序をつけるため、「粟花、蒸し粟、黄金花(こがねばな)」などとも呼ばれます。日当たりの良い草地を好み、昔は土手などに多く見られましたが、現在は自生地が減少しています。草丈60~100cm程度になる多年生植物ですが、初夏までは根出葉を伸ばすだけで、花茎はその後一気に伸長します。花のイメージに反して全草から独特の香りを放ち、特に「敗醤根(はいしょうこん)」と呼ばれる根は腐った醤油の臭いに例えられ、漢方では解熱や消炎、浄血、排膿に用います。和名の由来は諸説あり、オミナが「美しい女」、エシが古語の「へし(圧)」を意味し、美女を圧倒する美しさからとか言われます。また糯(もち)米を炊く強飯を「男飯」と呼び、粟を炊いた粟飯を「女飯(おんなめし)」と呼んで、粟飯に似た花だからオミナエシとなったとか。オミナエシよりも日陰に強くて全体に毛が多く、花が白いオトコエシ(男郎花)に対比して、弱々しいオミナエシ(女郎花)とも言われています。迎え盆の13日より前に山から花を採ってきて、盆棚や墓地に供えることを「盆花採り」とか「盆花迎え」と呼び、山から持ってきた花は精霊や先祖の依り代になるのです。お盆には「ご先祖様が山から帰ってくる」と言われますが、「お盆」はインドのサンスクリット語「ullambana」を音写した盂蘭盆会(うらぼんえ)の略だそうで、「お盆」などと略されるようになったのは、器の「盆」にお供物などを盛って先祖の霊をもてなすことからとされます。また本来、器の「盆」は平たい形状のものを意味する言葉でしたが、次第に鉢や食器などを指すことが多くなり、盆栽や盆地という言葉の所以となっています。盆の習慣は江戸時代に入ると民間の行事として盛んになり「盆礼」と言って親族や知人の家を手土産を持って訪ねる習慣となり、その盆礼は中元と呼ばれていたため、今日の「お中元」につながるとも言われます。さてみなさんは、オミナエシの花を見て何を思い浮かべますか。▲黄色いオミナエシと白いオトコエシMORINOTAYORI 8